生活人コラム



 INO.VOL.24 職場のメンタルヘルス【井上 透】

 [執筆者]
 井上 透
 [紹 介]
 ブリヂストン健康管理センター勤務の産業医。大学講師。医学博士。
 企業の健康管理センタ−に所属して、社員の肉体的および精神的な方面まで含めた総合的な健康管理の仕事をされています。




 NO.1 はじめに--2005.4.6


 近年、職場でうつ病などのメンタルヘルスの重要性が叫ばれています。うつ状態の人が自殺してしまうのは企業として管理上の最悪の結末です。

 毎年の3万人以上の自殺者の内訳を分析してみると、約9000人が働く人で全体の約25%を占めます。

 しかも、自殺者の約7割は、うつ状態あるいはうつ病であるという報告もあり、会社としても、うつ傾向の人を早期発見・早期介入して治療を始めるのは自殺防止対策として有効だとの認識があります。

 うつ病などの精神疾患で自殺者がでた時に、その原因が労務管理上の問題であり、仕事のストレスが発病のきっかけとなったと判断された場合、過労死と認定されるようになってきました。(そのような判例もでています。)

 つまり、メンタルの問題をおろそかにして自殺になるまでの安全配慮義務を怠ったとして労災認定されるということです。この場合の「安全」とは、社員の「健康」も含めた広義の意味を含んでいます。


 たとえ経営業績が比較的安定していて、上司部下間の人間関係が比較的良好な企業でも、バブル崩壊後のリストラの影響で人員カットされた結果、一人あたりの業務量は増大し、さらには業務のIT化に伴い高度なテクノストレスを感じている社員も増えています。

 経営の苦しい企業、あるいは中小企業で労使間の雰囲気も悪い職場とか、あるいは自営で経営の苦しい社長さんのところでは、 その絶望感も加わり、自殺者が急増していると推測します。零細企業では産業保健体制が貧弱で、保健スタッフや労務のメンタルの管理ができていない所も多いでしょう。


 厚生労働省が5年おきに施行する「労働者健康調査」でもわかるように、約6割の人が職場でのストレスを感じています。うつ病にまではならなくても「うつ状態」の社員は多いのです。

 うつ状態に陥った社員は、まず、仕事ができなくなり、作業能率も低下し、仕事のミス(ヒューマンエラー)も増えます。うつ状態では集中力や思考力が欠如し作業場での労働災害の危険も高まります。うつ病などの休業日数は、それ以外の疾病による休業よりも4倍以上多いという報告もあり、かなりの労働損失です。

 このように、企業の生産性の維持管理、企業のリスクマネジメント、社員のQOL(生活の質)向上の要請を契機に、うつ病などのメンタル対策が活発に展開されてきたと言えるでしょう。


 「うつ病」や「うつ状態」にもいろんな違いがあります。
内因性うつ病

 外的環境とは関係なく自然発生的に脳内物質であるセロトニンの伝達不全からくるもので、抗うつ剤などの薬物治療が不可欠です。全人口の0.3%しか該当者はいませんし、心理療法は効果は期待できません。

心因性うつ病

 親しい人との死別・失恋・大切な財産や物を失う喪失体験・名誉の失墜により、悲哀・絶望・抑うつ気分・睡眠障害・食欲不振に陥ります。

 通常は時間の経過とともに徐々に軽快しますが、なかにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)として心の傷を残して回復に2−3年もかかる場合もあります。なるべく早期に心理療法を始める方が、回復も早く自殺予防にもなります。

適応障害(社内うつ)

 職場での業務中に限って不安感や抑うつ症状が出現します。対人関係がうまくいかなかったり、苦手な上司や同僚がいたり、本人にとって業務そのものの量が多く高度になるとついていけません。この場合は会社では元気がなくて、社外では元気になります。

 心理療法での本人の自己変革も求められますが、周囲の対応策の工夫や業務内容の再検討や職場環境の改善も重要です。会社の健康管理スタッフによる職制を通じた指導も必要な時があります。心理療法の専門家だけでは対処できず、社内監督者も一緒になって対応を考えなければいけません。

 働き盛りの中高年男性の増えつづける自殺者の場合、この「心因性うつ病」「適応障害」が多数を占めます。


 そのきっかけは「仕事がうまくいかない」「病気」「借金」などの悩み事が多いのです。

 本来は、自殺予防のためにも、家族の監視と愛情支援はとても大切です。家族に相談できてうまくストレスを処理できれば自殺にまで至ることはないでしょう。ところが、家族に心配かけまいと黙って我慢している人もいます。その場合には、身近な上司・先輩・同僚に本音の愚痴を聞いてくれる人がいれば救われます。

 しかし、数値目標の達成に奔走する競争職場では弱音を吐くのは許されない雰囲気があり、誰にも相談できず人知れず悩みを抱え込み、精神的に追い込まれて自殺に及ぶケースもあるでしょう。

 職場で最も有効な具体的方策とは、管理監督者を中心にメンタルヘルスの研修を受けてもらうことです。仕事の厳しさを前面に出しながらも、困ったことをいつでも親身になって相談に乗ってくれる一面も持つ上司がいてくれるだけで、大きな自殺抑止力になるでしょう。

 上司の振舞い方次第で職場の雰囲気は明るくなり、快適職場に向けた最初の一歩となります。つまり、メンタル障害者が職場ででた時に、周囲の者がカウンセリングマインドを身に付け対応できる技術を習得すれば良いのです。


 心理療法としては、精神科医・心理療法士のおこなう様々な専門的な方法があります。難解で高度のスキルを要するカウンセリングは必要ありません。

 次回から2回にわたり、一般人でも習得しやすい「積極的傾聴法」を中心に紹介します。



 NO.2 メンタル相談の実践編1--2005.5.2

 <メンタル相談の心得>

 会社内健康相談では、相談内容は他人には漏らさないでプライバシーを守るという確約を面談前にいたします。何を言っても職場の皆に情報が漏れなず、職場での立場が悪くならないように保障します。

 もちろん、上司との人間関係に問題がありそうなら、後で上司との面談でその事を言っても良いという本人の許可をもらうことはあります。

 クライエント(来談者)の緊張をとるためにも、セラピスト(施療者)自身もくつろいだ態度を示します。馴れなれしすぎず、かといって堅苦しくない、中道の姿勢をこころがけます。

 また会話の時は、なるべく、クライエントと目を合わせるようにして、関心を払っているように明示します。もちろん少ずつ視線を動かしはしますが、詮索しようとするような冷たい分析的視線で凝視するのも良くありません。

 小柄な女性の場合は、威圧的にならないように、椅子の高さを調整して、視線の高さが同じように配慮したほうが良いでしょう。

 以上述べたことは、非言語的コミュニケーションといい、面接の要綱です。


 私のところではそこまでできていませんが、花を置くとか、壁や装飾品の色や掲示物に工夫を凝らすとか、アロマセラピーではありませんが女性の好む芳香剤を使用するとか、リラックスできる音楽を流すとかも一考でしょう。

 つまり、何でも言いたい事を本音で言える雰囲気・環境づくりに配慮するのです。

 クライエント(来談者)とセラピスト(施療者)の関係は、会社内の部下と上司、あるいは同僚同士の関係にあてはめてみてください。


 <積極的傾聴法の基本姿勢と実践方法>

 アメリカの心理学者(カール・ロジャース:1902−1987)の考案したクライエント中心療法を紹介します。

 クライエント(来談者)自身の持つ潜在的な自己成長力を信頼するという基本姿勢です。

 自己実現傾向への信頼の具体的実践には、クライエント自身が面接の方向や速度を主導し、セラピスト(施療者)はそれを的確に支援していくということになります。悩みの大部分は知識の欠如からおきているのではなくて、情動・感情の問題からおこっている場合が多いという前提に立っています。

 人生そのものの不安・空虚感を覚え、問題の本質が感情的になりすぎて見失っている人に最適です。

 この心理治療が成功するための6つの必要十分条件を提示します。

1)2人の人間が心理的接触を持っている事

2)クライエント(来談者)の自己概念が不一致状態にある事

3)セラピスト(施療者)の自己概念が不一致状態にある事

4)セラピストはクライエントに無条件の肯定的関心を体験する事

5)セラピストはクライエントに共感的理解を体験する事

6)無条件の肯定的関心と共感的理解が最低限クライエントに伝達されている事


 具体的に、健康管理室で積極的傾聴法をする場合の状況説明をします。


 簡単な病気の場合、5−10分の問診(分析的な質問)と診察で薬の処方で終わりですが、メンタルの相談の場合は30分以上(時には1時間ぐらい)の時間をかける事も多いです。

 経営を重視した通常の病院・医院ではとてもできません。日本では医療相談・心理療法に時間をかけても保健点数に上乗せはできないからです。これだけ時間をかけられるのは、面談の仕方も積極的傾聴を重視しているからです。


 クライエントとの面談前に、保健師や上司や家族から背景や実情などの情報を一応仕入れておきますが、クライエントと最初に顔を会わせた時は、それらの先入観をいったん置いておいて、白紙の心で見るようにしています。

 セラピストからはあまり言葉は発さず、クライエントのペースで満足いくまで話してもらいます。

 その時にクライエントと正面に向き合い、訴えを聞きながら相づちをうち共感し、親身になって受容的に聞き入ります。悩みの一言に対して、その都度首をたてに振って相槌をうつとか、セラピストの顔の表情も「同情します」という誠意が伝わるようにします。

 セラピストの発する質問はなるべく開放型の質問にします。たとえば「今まであった事、苦しかった事なんでも話してください。」というように、クライエントが話題を限定しないで、言いたいことを言える雰囲気づくりを大事にします。

 時にはクライエントの話をセラピストがくりかえして述べたり、時には「それは本当に大変だったですね」と同情発言をします。これは、クライエントに向けて、十分に理解していますよという誠意を伝える重要な意味があります。

 クライエントの話を途中でさえぎったり、話題を変えるように促したりはしません。


 女性のクライエントは繊細で感受性が強いので、発言された内容について、より情緒的・共感的対応を強調するのが望ましいでしょう。

 不安の原因追求をするような問いかけも初回面談ではなるべくしません。

 明らかに誤った言動や思想に気づいたとしても、その場でそれを批判したりなどの発言もしません。そこでアドバイスを急ぐと、クライエントの心が閉じてしまい、以後の交流に支障をきたすからです。

 いろんな複雑な背景を聞くだけでも十分時間がかかりますが、初回面談の時は悩みの中核の部分はどこにあるかを理解することに努めます。よくしゃべるクライエントの時には、ほとんどセラピストはしゃべらない時もあります。


 初回面談の時は、クライエントが「今日は自分の悩みの全てを言い尽くせた」と満足して帰ってもらうのが目標です。

 クライエントのはっきりした要望のないかぎり、セラピストの方から指示するようなアドバイスはしません。このような面談を重ねていくうちに、クライエントとの信頼関係が徐々に高まりオープンマインドになります。

 一通り悩みをクライエントが語っているうちに、「自分はあの時こうしておけば良かった」とか「あの時の自分の対応はどうしておけば良かったのかな?」という解決のヒント発言が出てきて、自らが気づいていただくのが理想です。


 面談を重ねてお互いなんでも自由に言い合える信頼関係が確立すれば、アドバイスを求められるようになり、その時はセラピストの考え方を徐々に披露していきます。

 そこまでいかず、ただ話を聞くだけで気分が快方に向かう場合もあります。クライエントの心の中でどのような認知の変化が起きたかはわかりませんが、話すことで、不安の正体が曖昧なものから鮮明なものに変化し気持ちの整理も進むのでしょう。

 面談の最後に「自殺はしない」と約束するようにしています。



 NO.3 メンタル相談の実践編2--2005.6.1

 <積極的傾聴法の限界とセラピストの心得>

 何度も面談を重ねながらも地道な粘り強い忍耐力を要します。当然、面談時間は長くなります。通常の医療機関では実際的ではないかもしれません。ただ、クライエントの望むペースと時間で余裕を持って発言できるように、クライエントの立場に合わせて設定するのが好ましいのです。

 なかなか快方に向かわず変動しながら横ばいの人もいます。クライエントのストレスのはけ口として受け入れているのですから、通常の診療の面談よりも、とても疲れます。

 積極的傾聴法では、クライエントのマイナス感情を一時受容しますので、セラピストの心が曇らないように注意しなくてはいけません。

 メンタル問題者との面談は、セラピスト自身が瞑想・祈り・宗教的真理の学習などを通して普段から精神的修業や積極的なプラス思考の補充が欠かせません。


 うつ病患者さんの中には、過去の苦悩体験などが複雑にからみあい、悩みのピンの部分が漠然として整理できていない場合もあります。あるいは、悩みの本質的な部分を心の深層に押し込めたり、思考を避けたり、他の問題にすりかえて無意識のうちに自分をごまかしている人もいます。

 その時に、セラピストの分析的誘導やアドバイスが、クライエントの自己観照を妨げる要因になることがあります。また、セラピストの価値観自体が正しさからかけ離れた場合、アドバイスはかえってマイナスに作用します。

 積極的傾聴法はそのような危険を回避できる安全な面もあるし、様々な価値観の人でも習得可能なのが良いところです。


 積極的傾聴法は幅広く受け入られている心理療法の基本なのですが、これだけではうまくいかないケースも多々あります。

 例えば、悩みの本質的な部分がわかったとしても、それが外的環境要因だったり人間関係調整法の問題だったりするのなら、解決法を提示する指導や支援を与えないと良くなりません。つまり、その後には原因に対処するためのストレスカウンセリングが必要になります。

 職場でよくある「うつ状態」には、社外では元気だけど、会社勤務中にだけ気分の低下を訴える「社内うつ」が大多数を占めます。このうつ状態は「適応障害」からくる外部の人物や状況が要因になっています。

 職場の人間関係や仕事の負担などによっておこるストレスからおこる「うつ状態」に対して、彼らを元気づける手法として、積極的傾聴法だけでは限界があります。

 外的には、人間関係や職場環境を改善する対策を立てなければ改善しません。

 内的に、個人への対応としてさらに導入するべきなのは、ベックの認知療法とか、ストレスの原因となる対処法としてのコーピングなどの価値観の転換の働きかけが重要となってきます。

 積極的傾聴法だけで心や魂が癒されて快方に向かうところまでいくのは困難なケースも多いのです。

 ですから、積極的傾聴法とは、面談初期段階での相互理解と信頼関係構築の導入のための手法としての役割が大きいと考えて良いでしょう。また、聞き上手の社員が増えてくるような社風が高まれば、社員の相互支援が多くなり、人間関係からくるストレス源の軽減が期待できます。

 特定の価値観の押し付けではない分、社内メンタルヘルス研修用の教材として有用ですが、決して万能でもなく、あくまで心理療法の導入段階の手法だとご理解ください。


 <積極的傾聴法の発展的解釈>

 面談初期のクライエントの悩みの本質が理解できて信頼関係が構築されると、積極的傾聴法は終了し、次の段階として認知療法などで価値観の転換の指導に切り替えていきます。

 また、自分を直視しようとしない人の場合は、誘導補助のアドバイスも必要でしょう。ここから先どのように価値観を転換して行動変容し、正しき心を探求していくかは、セラピストの指導が要る場合もあります。

 あくまでクライエントの自発的気づきを促す方法です。悩みの根源がなにかをつかみ、ありのままの自分の気持ちが発見できる方向に支援するための方法なのです。


 私は、この積極的傾聴法の理論から、「立ち向かう人の心は鏡なり」の格言を連想します。

 セラピスト自身が傾聴の姿勢を示すことで「鏡」のようになってほしいのです。セラピストが肯定的関心に伴う受容と共感の対応をされることで、クライエントは自分自身の歪んだ心に相対しているとも言えます。

 特に、自分とは異なる価値観の違いにすぐに反発し聞く耳を持たない人の場合ほど、導入はこの積極的傾聴法が妥当だと思います。セラピストがクライエントの発言をくりかえすことで、自分の言動や過去の体験に対して真正面から向き合わざるをえなくなるのです。


 仏教の八正道でいえば、正見と正語と正業の反省への機会を与えていると言えるでしょうか? あるいは正思の反省の入り口に立つというところでしょうか?

 自分の心を見つめるという習慣のなかったクライエントが自分の事を多く語るうちに、クライエントの示す鏡面的対応につられて内省的になり自分の言動の深い意味を吟味し、自らの心の傾向性を知ろうとするきっかけが始まります。

 さらには八正道による反省が進み、心の塵を取り除くという自助努力の結果、内なる仏性の部分に気づいた時に救われるのです。


 クライエントのマイナス思考に毒されて、セラピストの心に塵や色がつけば、クライエントにとっての「本当の自分自身発見の旅」はストップし、ミスリードしてしまいます。

 セラピスト自身もクライエントをありのままに映しだせる鏡になれるように、くもりのない心と理解してあげようという思いやりが求められます。

 クライエントを理解しようとするのは、愛を与えているのと同じ事なのです。セラピスト自身も常に心の塵を取り除く宗教的修行が欠かせません。つまり、「無我なる愛」を貫く己に厳しい姿勢をセラピストの理想として掲げたいと思います。



 NO.4 自殺予防の基本--2005.7.1

 <自殺しようかと迷う時に、本人が受け入れてほしい考え方>

1)物事はいつも完璧にこなさなくても良い

 うつ病になる人の病前性格として完璧主義者が多い。Perfectな人生より、少しでもbetterな人生で良しとする。

2)自殺は周囲の人を最も傷つける重い罪である

 自殺動機の一つに「周囲に迷惑をかけたくない。」というのがあるが、実際は、自殺をするとその後さらに周囲に迷惑をかける卑怯な逃避行動。美化しない。

3)自分も相手も許せる勇気を持とう

 自分も相手もお互い不完全な人間だ。そのために間違いが生じることもある。いつまでも相手を恨み続けないで、自分や相手を許す時効があっても良いだろう。

4)最も苦しい時期は半年以上は続かない

 時間に耐えれば必ず新たな局面が開けてくる。とりあえず今日1日を生きる目標設定を。半年後に振り返れば、さらに魂の成長した自分に気づくはずだ。

5)幸福になる道は無限にある

 ひとつの方法での道が絶たれても、よく見渡せば別の迂回路が発見できることもある。絶たれる道を想定して、普段から幸福の多角経営をめざそう。

6)現在苦しんでいる逆境から何を学ぶか考える

 苦しい時に発見した教訓は、将来、成功する幸福の種となることがある。逆境を通じて自分の魂は鍛えられ、いずれはもっと頑強な人間に成長すると信じよう。

7)見栄やプライドやメンツは捨てる

 プライドにとらわれ過ぎている自分の慢心を反省しよう。名誉に固執するのが苦しみの元になっている。無一文・ゼロから出直す人生もある。

8)会社経営には縮小・撤退戦略が必要な時もある

 業務の絞込みや人員削減の断行が最良の会社存続の方法の場合もある。あるいは、いっそ破産申告してゼロからやり直す決断が必要な場合もある。

9)一時の失恋や受験失敗だけで人生が決まるわけではない

 失恋しても、自分の人格を磨こうと努めていれば、また良い人との出会いがあるはず。希望の学校に行けなくても、社会人になってからの挽回は可能だ。

10)病気になって肉体が不自由になろうとも心の修業はできる

 病気を通じて周囲の看護者の方達から受ける優しさを学ぼう。今までの人生を反省する機会だととらえ、皆様への感謝の思いを強め、笑顔で接しよう。

11)自殺をすれば「あの世」の天国には行けないという霊的人生観を受け入れよう

 自殺者は本来予定された寿命が来るまで地上をさまよい、遺された家族の苦しみを見続けるあの世での苦しみはこの世で味わった苦しみがさらに増幅され、さらに辛い思いをする。

12)苦しみに耐えて生き抜くことで、あの世では素晴らしい世界が待っていると信じよう

 たとえ素晴らしい建設的な思いをもって努力しても、この世での実現には一定の時間がかかる。この世的な制約があって実現できなかったとしても、あの世では実現できるという夢を持とう。


 <自殺予防のために周囲のできる支援>

1)悩み事をじっくりと共感的に聞いてあげる

 話を聞いてもらえ自分の心情を理解してもらえた人は愛されていると感じる。共感されることで、自分の悩みをわかってくれた同胞がいるという安心感につながる。

2)うつ状態の人に「頑張りなさい」と励ますのは禁句

 うつ状態の人は精神エネルギーが枯渇してしまい、頑張りたくても頑張れない状態だ。ガソリンのない車に、アクセルを踏んで走りなさいと言っているようなものだ。あせらずにゆっくり休養して充電が必要なことを伝え、休業できる周囲の配慮も必要だ。

3)なるだけ組織的に支援できるように、家族・同僚・専門家の協力を仰ぐ

 相手が様々な生活局面(家庭・職場など)で孤立化しないように連携・協力体制を構築する。各地区の保健所では無料で相談ができる。信頼できる宗教が助けになることも多い。うつ病の急性期は薬物治療も有用であり精神科・心療内科受診も勧める。

4)死にたいと思った事はないかを勇気を出して質問してみる

 相手の死にたいという気持ちをストレートに言葉に出して訴えるためのきっかけになる。希死念慮を理解してくれる人が周囲に増えれば、守られているという安心感が生じる相手は心を開き、さらに辛い心情を語り、自殺の抑止力につながる。

5)「自殺しても楽になれない」事を伝える

 自殺者は本来予定された寿命が来るまで地上をさまよい、遺された家族の苦しみを見続ける。あの世での苦しみはこの世で味わった苦しみがさらに増幅され、さらに辛い思いをする。天国に行けないという霊的人生観を信じてもらう事が大きな抑止力になる。

6)「あなたが死んだら私は悲しい」と伝える

 周囲の人達から自分は愛されているのだときちんと認識してもらう。親しい人から「あなたが生きて傍にいてくれるだけで私は幸せです。」という言葉も有効。

7)「自殺は絶対にしない」と約束してもらう

 面談の最後に、この約束をしてから別れる。必ず次の面談の日時を約束するのも忘れないこと。

8)手紙やメールで「気にかけている」というメッセージを送る

 うつの人への長時間の面談や電話は疲れて辛いことも多い。それよりもゆっくり休む事を優先的に考えないといけないこともある。最低限気にかけているという手紙やメールに目を通してもらうことはできる。自分は見守られているという安心感が救いになる。

9)粘り強く、あきらめず上記支援を継続し、相手が必ず良くなると信じる

 時間はかかるかもしれないが、相手の死にたいという気持ちは必ず変わるのだという信念を抱き続ける事、それが強力な想念となり自殺抑止力につながる。


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