生活人コラム
INO.VOL.25 細菌性食中毒の発病予防【井上 透】
--2005.8.2
[執筆者]
井上 透
[紹 介]
ブリヂストン健康管理センター勤務の産業医。大学講師。医学博士。
企業の健康管理センタ−に所属して、社員の肉体的および精神的な方面まで含めた総合的な健康管理の仕事をされています。
食中毒の原因は、頻度は少ないですがふぐ毒・きのこ毒などの自然毒によるもの、メタノール・水銀などの化学物質によるものなど特殊なものもあります。
暑い時期の食中毒の9割以上が細菌やウイルスによるものです。症状としては、ほとんどが腹痛・下痢・嘔吐などの胃腸炎症状です。
<頻度の多い原因4細菌>
1)腸炎ビブリオ:海の魚に付着している。海水温が20℃以上になると増殖。
(潜伏期) 10−24時間。
(症状) 発熱・胃腸炎症状。
(対策) 生魚の場合は十分な水洗い。加熱で大丈夫。
2)サルモネラ菌:ニワトリ・豚・牛肉の腸管内に生息している。卵や肉から感染。
(潜伏期) 12−72時間。
(症状) 発熱・胃腸炎症状。
(対策) 生卵の冷蔵庫保存。加熱で大丈夫。
3)黄色ブドウ球菌:調理人の手指にある傷に潜んだ菌が産生する毒素が食品に付着。
(潜伏期) 5−8時間。
(症状) 胃腸炎症状。
(対策) 加熱効果なし。調理人の手洗いの徹底・手袋着用。おにぎり料理は避ける。
4)病原性大腸菌(O-157など):菌の産生するベロ毒素が大腸・血液・腎臓・神経を冒す。
(潜伏期) 3−9日間。
(症状) 腹痛・下痢から始まり血便も伴う。血液障害(赤血球破壊・血小板減少)、腎臓障害(尿量減少)。
(対策) 加熱で大丈夫。血便を認めたらすぐに病院へ行く。
<食品の保存期間のめやすー夏季ー>
(肉、魚) 購入翌日までに使用。
(野菜、果物) 2−3日、使用直前に流水による洗浄を徹底する。
(卵) 冷蔵庫で2週間。
(油揚げなどの豆製品) 未開封で4日、開封したらその日内。
(牛乳) パックを開封したら次の日中内。
(ハム、ソーセージ) 開封したら2−3日内。
<冷蔵・冷凍の注意>
密閉した容器に冷凍すれば長期保存も可能。ただし1ヶ月以内には解凍使用する。
解凍の注意として、室温解凍は常温になった時に菌の増殖をきたすので、電子レンジで即解凍するか、すぐに加熱調理する方が安全。
<2次汚染被害の予防>
調理時に細菌に汚染された手・まな板・布巾を介しての感染を予防する。
(まな板) 熱湯をかける、木製よりプラスチック製の方が安全。肉・魚調理後の生野菜調理が危険なので、使い分けるか間でよく洗う。
(包丁) 刃の部分だけでなく柄の部分も洗い、煮沸消毒。
(布巾) 漂白剤につけて、翌日は日光にあてて乾燥させる。
(木、竹製調理器具) 隙間に菌が染み込んで付着していることもあるので漂白剤で消毒。
(タワシ、スポンジ) 菌が染み込んでいるので洗うだけでは不十分。熱湯・煮沸消毒。
(タオル) 1日1回は新しいのに交換。
<食中毒予防の3原則>
1)菌をつけない
手や調理器具を洗ったり消毒したりして清潔を保つ。
2)菌を殺す
加熱殺菌が基本。
ハンバーグや餃子などの加熱も不十分だと中心部の菌が生き残る事がある。
通常は75℃以上で1分間以上加熱すれば菌は死滅する。
3)菌を増やさない
菌は20℃以上の気温で急激に繁殖する。
低温では菌の増殖が抑えられるだけで死滅しない。
10℃以下の冷蔵庫・−15℃以下の冷凍庫に保管する。
新鮮な食材を選び、長時間の買い物の持ち歩きは止める。
弁当などは早めに食べる。
<発病時の心構え>
もしも突然の吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・くちびるのしびれなどの症状が現れて、同じ食事をした人が同じ症状を認めている時は、集団性食中毒の可能性が高いので、吐いた物・便・食べた物をビニール袋に入れて、すぐに病院に行きましょう。
決して、素人判断で市販の下痢止め薬で済ませようとはしないでください。
脱水状態にならないように、こまめにスポーツ飲料などを摂取してください。
[
バックNOもくじへ
//
最前線クラブへ戻る
//
トップページへ戻る
]