生活人コラム



 INO.VOL.4 職場とメンタルヘルス

 [執筆者]
 井上 透
 [紹 介]
 ブリジストン健康管理センター勤務の産業医。大学講師。医学博士。
 4月からは、西日本新聞の『健康と福祉』欄で『産業医のメモ』を担当されています(毎週木曜日の朝刊)。



 NO.1 自分のこと 96.8.1

(自分の時間)

 皆さんの毎日の悩みは時間との格闘です。

 残業・飲み会で時間を潰して平均睡眠時間は4〜5時間、しかも自動車通勤のため歩く機会も少なく運動不足となり、土日はゴルフと家庭サービスで、1週間体の休まる暇のない人もいるでしょう。
 そんな生活に生きがいを感じる人もいるのかも知れませんが、そのまま無理を続ければいつか病気をしてしまいます。

 良好な人間関係はなるべく勤務時間内に築くように努力して、健康のためにも自分の時間を確保しましょう。
 まず睡眠不足を解消して、お酒の誘惑に翻弄されないように注意しましょう。

 アフターファイブの自由時間の2割(例えば月〜金までの5日間のうちの1日程度)を、つきあいで夜を費やす理想としてみてください。そして、残りの8割(週のうちの4日間)は、自分の趣味・関心のある分野に時間を費やすのが理想です。
 会社の中だけでなく、地域の人や趣味の仲間とのつきあいの時間を確保するのが良い気分転換・ストレス解消になることがあります。

 そして、給料の1割程度を健康維持のための必要経費と考えて、酒やギャンブルに使うお金をできるだけスポーツクラブ・水泳教室・温泉小旅行などへ運用したいものです。
 また、スポーツの趣味も良いのですが、年老いると体力が落ちてきますので、精神的な趣味も広げていくのが老後の豊かさにつながります。

 特に、仕事ひと筋の方達に忠告しておきます。
 将来退職した後に何も残らない自分にならないように、普段から自分の時間を確保して、一生涯の生きがいとなる創造的趣味・ライフワーク・ボランティア活動にうちこむ努力を怠らないことです。
 今からこの習慣をつける事が、老人ボケの最良の予防薬になるでしょう。

(病と心)

 人間の体は不思議です。

 食物を材料として、新陳代謝のもとに毎日数多くの細胞が生まれて、また、死んでいます。つまり、自分を構成している細胞は、物質としては生まれた時と比べて全く入れ替わっているのに、自分という個体はそのままなのです。
 これは、親の体質を引き継いでいるから必ずしも自分の体が弱いという言い訳にはならない事、さらに、現在弱い体質だとしても、健康生活を維持しようと心がける事により、頑強な体になれる可能性を意味しています。

 まず、バランスのとれた栄養をとり、適度な運動で体を鍛えることです。
 このあたりまえのことを頭では分かっているのに実行できない人が大勢います。
 健診の結果が悪い時は誰でもが心穏やかではないでしょう。自分の将来の不安や悲観的な思いにとらわれて、そのストレスのために体調を崩すケースもあります。
 同じ病気でも、心の持ち方で経過はまちまちである事を私は病院診療の中で経験してきました。

 同じ病気で、同じ治療をしているにもかかわらず、明るい考え方をする人の方が経過が良いのです。
 ですから、健診の結果を必ずしも悲観的にとらえるべきではありません。
 健診での異常値はまだ病気としては早期な事が多いので、持ち直すケースも多いのです。「早めにわかって良かった。今から医者の指導のとおりに生活スタイルを変えて、明るい考え方を持ち続ける事により丈夫な体になれるのだ。」という希望と確信を持っていただきたいものです。

 このように、一見不幸と思われる出来事も、考え方を変えることにより、苦悩が安らぎに変わる事があります。
 ストレスを感じにくい考え方を身につければ積極的人生観を確立できます。

(職場の雰囲気)

 あなたの職場はどんな雰囲気ですか?明るいですか?暗いですか?

 どんな職場でも、機嫌の良い人と悪い人が混在しています。しかも、同じ人でも、天気と同じように晴れたり曇ったりしています。
 特に、感情の起伏の激しい人がいる所はたいへんです。周りの人は、いつもその人の機嫌の良否に神経をとがらせることになり、本来の仕事以外の事にエネルギーを浪費しなくてはならず、たいへんな損失です。
 しかし、当のお天気屋さんは周りの人のそんな苦労に気がつかない事が多いのです。

 人間は怒り・悲しみの感情が強くなったり、欲深くなったり、人を見下したりすると、他人の考えを正確に理解できなくなります。
 まず、心穏やかに人に迷惑をかけないようにしましょう。

 ところで、あなたは同僚が活躍して手柄をたてた時に素直に喜べますか?
 他人の成功は自分の不幸と思っている人は決して幸福になれません。
 なぜなら、他人の成功を全部駄目にして自分だけ成功すれば幸福と思っている人は、自分が幸福になったと思った瞬間に、他の人をすべて不幸にしていることが多く、多くの人から恨まれ、自分の幸福感をむなしいものにしてしまうからです。

 職場の中で何か良いことがあったり、誰かひとりの機嫌が良ければ、それを自分自身の幸福であると考える習性をつけましょう。普段からの心がけ・訓練を続ければ誰でも身につくものです。
 同じ環境でも、それを幸・不幸と感じるのは、その見方・考え方次第です。
 「こういう条件が整えば自分は幸せなのに」あるいは「こういう条件があるから自分は不幸なのだ」という、ワンパターン人間にならないようにしましょう。

(笑顔)

 皆さんは、毎日どれだけの回数、笑顔でもって人に接していますか?

 「笑顔は努力に比例する」という言葉があります。
 いつも笑顔の絶えない人は、いつも幸運なことばかり起きていると勘違いしていませんか?

 どんな人も、他人にはわからない苦労や悲しみはあるのですが、その時に渋面にならないで、朗らかに笑顔でい続けようと決意する人は素晴しい人です。
 こんな人は、部屋に入ってきただけでパッと明るい雰囲気になります。
 若いうちは、笑顔を持つのはそう難しくないかもしれませんが、30才、40才、60才と年をとっていった時に、あるいは病気をした時に、さてその笑顔をいつまで保つことができるでしょうか?

 笑顔がでない時の自分をふり返ってみてください。
 多分、悲観的な思いと言葉が出ているときだと思います。
 暗く沈んだ時に、一度、鏡を見てください。このような人相の人を、はたして、周りの人は助けてあげたいと思うでしょうか?

 無理して笑顔を作ろうとするのは、決して自分の内面をごまかそうという気持ちからではありません。
 笑顔の人がひとりでも多くなれば、その職場の人全員が嬉しくなり笑顔が自然と出てきますし、その笑顔を目にしたあなたもまた嬉しくなります。
 これは、誰でも使える魔法の力なのです。

 どんな厳しい状況でも、笑顔を、努力して維持しようと心がけましょう。
 ある会社が成功するかどうかは簡単にわかります。
 社員一人ひとりの顔が生き生きとしていて、あちらこちらで笑顔が見られ、明るく希望にはずんだ雰囲気がでているかどうかです。

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 NO.2 人との接し方のこと 96.9.1

(責任)

 皆さんは、仕事のどこまでが自分の責任範囲だと思っていますか?
 独りでした事は自分の責任だとわかります。他人との連携で協同作業をして失敗した時、すべて相手の責任なのか、どこまでが自分の責任であるかを、実証的に分析していく姿勢はとても大切です。

 相手のミスも、事前に警告を発する余地があったとわかったなら、自らの至らない所を自覚すべきです。協同作業では、前もって責任の所在をはっきりさせておいた方が良いケースもあります。
 自分の周りの出来事・事件が、自分の責任なしで起きる事は少ないようです。

 責任範囲の広い人ほど本当の独立心があると言えます。
 原因をすぐ周りに転嫁する性格、他人の言った事のせいにする性格、たまたま自分の過失でそうなったのであって、ただ運が悪かったのだと思いやすい性格の人は、独立心があるとは言えません。

 会社の中でも地位が上がるほど責任範囲は広がります。
 社長さんが一般社員より偉いのは、給料が高いとか、肩書きがあるとかの理由ではないのです。
 一般の社員は自分ひとりに責任を持てば良いのですが、社長は全社員に責任を負っており、会社名義でなされた全行為にも、あるいは直接介入できない仕事に対しても責任を負っているから偉いのです。

 部下の過失を責めるだけで満足し、「監督不行届きだった、自分にも責任の一端があった」と、真剣に受け止めていない人もいます。
 部下に「俺が責任をとるからすべてやれ」と口先だけで言うのは簡単ですが、実際に起きた出来事に対してどこまで本当に責任を負う事をやっているのかが、その上司の器を計る試金石になります。

(上下関係)

 もしもあなたが自分の理想通りの活躍ができず、それは上司の無能・人間的欠陥のせいだと不満に思っているならば、あなたはその職場では芽が出ないでしょう。

 あなたの眼から大したことがないと見える上司がいたとしても、現在その立場にあるならば、あなた以上の実績を過去に積んできたはずです。
 ですから、部下の心得としては、その実績や有能な部分に対しては尊敬する気持ちを忘れてはいけません。
 また、上司は、あなた以上にあなた自身の欠点を理解している事があります。上司の注意・説教は不当だとすぐに感情的に決めつけてしまわないで、そこに何か自分の改善点はないかを素直に考えてみましょう。

 逆に上司の立場で考えれば、部下に好かれずに、さらに業績を上げるのは難しいものです。
 部下の長所を誉めて伸ばし、しかし、間違った所があれば厳しく注意する両面が必要です。その時に優秀な部下の足を引っ張って、ケチをつけてみたいとか、その才能に嫉妬した競争心がでてきていないかをチェックすべきです。

 部下を育てるための忠告と、嫉妬心から出た注意とは別物です。
 偉い上司なら、自分にない部下の才能・人格に好意を抱き、慈しみ育てていこうと考えます。
 自分より優れた人物を配下に置き、それを自慢するぐらいの心境を持ちたいものです。その時、部下の眼から見るととても魅力的な頼りがいのある上司に映るでしょう。

(信頼)

 皆からもっと信頼されたい人は次の六つのパターンに陥っていないかをチェックして、自分の性格を分析してみましょう。

 第一は、言っている事と行動が伴わず、口先だけ上手な二枚舌の人です。

 第二は、自分中心の考え方だけで行動し、他人の立場を考えない人です。

 第三は、言動に一貫性がなく、話がコロコロ変わり、気分にムラがある人です。
 大局をとらえて重要事項の見極めができないため、流されて安定していないように思われます。

 第四は、仕事能力不足から、任せると失敗するのではないかと危惧されている人です。
 この中には、仕事の手際が悪い、約束や時間を守らない、ミスが多い、連絡・報告がないなども含まれます。このような人に限って、できるような顔をして見栄を張り、さらに矛盾が生じて苦しくなる事もあります。
 コツコツと自分のできる範囲で仕事を着実に進めていくべきです。

 第五は、情報管理ができない人です。その人に話をすると、口が軽くて全部つつ抜けになるために、皆から警戒心を持たれます。
 うわさは、広まると、だんだん事実が歪曲されて大きくなり、相談した人の悩みがさらに深刻になります。
 そんな人は、あまり他人のプライベートの部分に入り込まないのが賢明でしょう。

 第六は、自分の秘密を何でも話してしまう人です。
 皆から、深みのない人間に映ります。
 親しき中にも礼儀ありで、友人とのつき合いも、できるだけ自分の中のありのままの良い面を出すように心がけるべきです。

(関心)

 同僚が素晴しい実績・手柄をたてた時に、あなたは素直に喜べますか?
 もしも、その方の手柄が妬ましくて腹がおさまらないのであれば、次の二点を受け入れてください。

 第一は、その手柄はあなたにとって関心の強い領域である事、第二は、その相手は、敵ではなくあなたの理想像であるという事です。
 この時、自分の器からみて、全く可能性のない領域についてはサバサバとあきらめるべきです。
 自分にもそうなれる可能性がある時は、それが自分の理想像だと素直に認めて、彼の中にあって自分にはない部分を努力して身につけるべきです。

 例えば、車両販売の注文を、自分は年間2台がやっとなのにその人は10台もとってきます。
 その人を研究すると、人脈が広いとか、契約の取り方がうまいとか、話の切り出し方がうまいとか、いくつかの参考になるポイントがあるはずです。
 このように、相手の中にある最良の資質を謙虚に学んでいくように努めるべきです。
 成功する人は、他人の素晴しい所を発見できる人なのです。

 直接つき合ってもいない人を、他人のうわさ話だけでレッテルを貼って判定する人は、浅い考え方をする人です。
 先入観で人をみるのは、結局、関心が足りないのです。
 なぜ、他人の貼ったレッテルでもって同じ見方をしなくてはいけないのでしょうか?そのレッテルをはがしてみようと考えても良いのではないですか?相手が、過去にどれだけ失敗を積み重ねていたとしても、時には、白紙の心で強い関心を持って接することも大切です。

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 NO.3 人の好き嫌いのこと 96.12.31

(上司)

 あなたは上司との関係はうまくいってますか?
 上司のやり方が気に入らない、自分ならこうするという考え方を持っていませんか?
 あるいは自分としてはよくやったつもりなのに上司の評価が低くてがっかりしていませんか?

 一般に会社では部下は自分で選べても上司は自分で選べないようになっています。
 ですから基本的に上司とうまくいかない人は出世できません。出世したいと切望するならたとえどんな上司だとしても気にいられるのが前提条件です。
 本当に駄目な上司ならやはり忍耐しかありません。

 上司がそのままの地位に置かれているのは上層部の責任にあります。上司の批判は上層部の批判につながります。ですから極端な批判はあなたの出世の可能性がなくなる事を意味するので控えるべきです。
 会社はあなたの自己主張を認めるために成り立っているのではなく、組織として生き残り、より向上をめざしている所だと自覚すべきです。

 体制を批判する人の中では優秀なのは良いのですが、強きをくじく性格、人を裁く傾向のある人がいます。このような傾向のある人には、一般的に過去に自分が挫折したり失敗した経験があるため、自分より優れた人を認めたくない気持ち(劣等感)が潜在意識にあります。
 ですからその上司の好き嫌いは別にして、自分がサポートして必ずその上司を喜ばせて出世させてやるという意気込みで頑張るべきです。その時部下たる者のこころえは、仕事は一生懸命自分でやってその手柄は自分のものだと主張しないで上司に返す事です。
 上司はあなたの『有能さ』よりも『有用さ』を求めている事の方が多いのです。この法則を理解できない人は出世できません。

(言葉が作る幸・不幸)

 自分の思いがとげられない時、不満な形でしか自己実現ができない時、ややもすれば愚痴や不平・不満の言葉がでてきます。
 この時潜在意識下には「周囲の環境や事情のせいにして自分には責任がないのだ」という卑怯な心が根底にあります。
 たとえその職場の雰囲気や体制が客観的にみて良くないのが事実だとしても、自分もその構成員の一人なのです。自分にも責任の一端は必ずあるはずです。

 自分の工夫が足りなかったり、相手に自分の考えや状況を説明できなかったり、相手の特殊事情に関する理解不足があったのかもしれません。それも自分の責任だと認めることのできる人ほど器の大きい人物だといえるでしょう。

 愚痴の出る時、本人は心の中に不幸な自分の姿をイメージしているので、決してストレスの発散にはなりません。周囲の人もいやな気持ちになるのでさらに不幸な人を増やしてマイナス環境をさらに悪くしていまいます。
 愚痴をだして平気な人は能力不足で他人への思いやりに欠ける人だと思います。

 言葉は自分を取り巻く環境を良くも悪くもする原動力になります。だから自分を取り巻く環境が不遇な時こそ、その良くない事を認める言葉を出すのではなく、良い言葉を出していこうと念う努力が大切です。
 マイナスの言葉には愚痴の他に嫉妬心、貪欲な心、怒りの心がこもった言葉も含んでいます。これらの言葉を排し他人を傷つけない優しい勇気の出る明るい言葉を笑顔でもって振りまけるように心がけたいものです。

 まず試しに自らがこれを実践してみてください。
 きっと周りの人々も徐々に変わっていくはずです。その時周りが暗いと思っていたのは、実は自分の暗い心を写していた鏡だった事に気付くでしょう。

(苦手な人)

  同じ職場に苦手で毛嫌いしている人はいませんか?
 あなたはなぜその人を嫌っているのでしょうか?多分、過去その人から頭にくる事を言われたとか、自分の希望通りにその人が動いてくれなかったなどのエピソードがあるはずです。
 確かに皆がおかしいと言うならば、その人は本当におかしな人なのかもしれません。しかしその嫌いな人は他の第三者から好かれている場合はありませんか?もしもそうなら嫌いだという自分の判断が間違っている可能性もあります。
 過去の出来事からあなたが判断したその人物像はその性格のごく一面かもしれません。理解不足のためその人の長所を見逃しているのかもしれません。

 人格は年をとるごとに変わってくることもあります。
 現在は素晴しい人格なのに過去のその人の性格にこだわって観ていませんか?レッテルを貼って人を裁いていませんか?たとえその人の価値観が自分と違って相性が合わないと思ったとしても、嫌な人だと決めつけるのではなく、個性の強いユニークな人だと思うように心がけましょう。

 もしもあなたの周りに苦手な人があまりにも多いと感じる時、もしかしたら自分は他人への関心が浅すぎないだろうかと考え直してください。
 自分の考えのみが正しくそれ以外の考えをする人は悪人だと決めつけるのは間違いです。1人の人間に蓄積された知識と経験は莫大であり、他人がすべて理解するのは不可能です。

 だからこそ人から学ぶ姿勢が大切です。
 たとえ誤った言動をしている人でも反面教師として学ぶべきことはあります。毎日出会う人すべてが大きな教材です。それをどう生かせるかが人生の成功と失敗の分かれ目になります。

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 NO.4 発想を変えること 97.2.1

(交渉力)

 会社でうだつのあがらない人の中には交渉事の下手な人がいます。

 人前に出ると緊張して自分を見失いやすく、他人と議論したり駆け引きするのが嫌いな人に多い傾向にあります。相手と会う前に交渉内容のポイントを整理し相手の反論しそうな所を予想し、それに対して自分の主張する事を頭の中で反復練習しておく事が大切です。その場の気分でするのが大きなプレッシャーになるからです。

 過去に積極的に出て出鼻をくじかれ挫折・失敗した経験があり、それにとらわれて結果を恐れてうまくいかない人もいます。

 中には相手の反応を見ないで相手が不愉快にしているのに気づかず自分の話に自己陶酔している人もいます。交渉中に相手の考えがわからずに自分のペースで話を進めてはダメです。認識力を上げて人間観察をしっかりすべきです。
 「こんなタイプの人はこんな考え方をするからこのように言うとこういうふうに返ってくるのだ」といういろんな人間の類型や考え方を普段から研究すべきです。

 相手のタイプにより交渉の運びも当然違ってきます。勝手に自分だけの交渉シナリオを作ってはいけません。相手の出方に合わせて押したり引いたりしてどんな話の進め方が効果的であったかをその都度記憶しておきましょう。
 この積み重ねが実力になります。あとはいかに粘り強いかが鍵となります。その前提として私的な悩み事をできるだけ解決しておく事も大事です。

 結局交渉力とは、まず自信と知力と情熱でもって自分の内を固める事、そして相手を変えてやろうと考えすぎずに限りない関心を持って接した時にできあがる経験の蓄積なのです。

(評価)

 皆さんは誰もが多くの人から好かれたいと思っているでしょう。
 しかし現実にはいてくれて良かったと言われる人とその人がいるだけで周囲は不愉快になる人の2通りがあります。前者は他人を悦ばせる生き方をし、後者は他人を害して生きているかたです。

 他人に迷惑をかけているのに気づかずに、自分は良い人間だと確信しているかわいそうな人もいます。その中では切れ者で頭の回転が早く他人の欠点がよく見える人もいます。周囲からはその人が近づいてきただけで何か批判されるのではないかと思われ近寄り難い人だとみなされます。
 そんな人は外見をなるべく温和になるように変えていく事から始めましょう。
 いつも批判・悪口ばかり言っている人は口がとんがってひん曲がってきます。いつも厳しい目で他人を裁いてばかりの人は刺すような鋭い目つきになってきます。時々自分の顔をチェックしてみてください。

 他人に厳しい外見が出てくる人の中には深い劣等感を持っている人もいます。しかも本来自分は優秀なはずだと思っているのに周囲が自分を正当に評価してくれないと不満を感じている人も多いのです。
 自分のしたい事を仕事の中で発見できその業績について他人の正当な評価を受けられた時、その人は本当の喜びを感じます。そのためには時間をかけてじっくり着実に実績を積み重ね自己評価と周囲の評価ができるだけ近づけるように努力すべきです。
 結局周囲が自分に何を要望しているのかがわからないのです。自分の都合を合理化して自己主張するだけでは誰も評価してくれません。

(やる気)

 あなたは毎日生きがいを感じて仕事をしていますか?やる気がなくイヤイヤでの仕事では注意力散漫・集中力低下をきたし大きな事故につながります。なぜやる気がおきないのか考えたことはありますか?

 一般的にやる気のない人は自己イメージが低いという特徴があります。
 毎日の生活に具体的な目標もなく流されて行き当たりバッタリの人生を過ごしている方が多いのです。そんな人は次の点について自己チェックしてみてください。

 第1にやる気の起きない原因が自分の中のどこにあるのかをチェックしてください。おそらくなんらかの失敗挫折体験があるはずです。それにいつもとらわれていませんか?

 第2に今のままで良いのかあるいは自己変革の意思があるのかを考えてください。
 このままで良いと思っている人はどうしようもありません。自己変革の意思がある人は次の実行が大切です。
 それは毎日目標を設定し理想的な自分をイメージすることです。遠大な目標ではなくて手短な努力でなにかを改善しようとまず一歩踏み出して行動をおこし、その達成感・成功感を少しずつ積み重ねていくべきです。特に自分の得意分野でその長所を伸ばす方向でまずはじめてみましょう。外に向けて動けないのなら今自分にできる手近なことから改善点を見い出そうとしてみてください。

 イライラして仕事ができない原因の1つとして書類整理が悪いだけの事もあります。
 問題事を考えるのをいったんやめて机の上や引き出しを整理してみてください。処理済と未決の書類を分ける作業をするだけで非常にスッキリして、気分も変わりやる気が起きてくることもあります。

(逆発想)

 私たちは職場や家庭での失敗・挫折の中で時として絶望的になることもあります。しかしこの一見失敗と思われることも別の角度からとらえなおしてみると新たな道が開けることもあります。

 例えばもうすぐ定年退職の人にとっては若ければもっといろいろできるのに残念だと考えがちでしょう。ところが定年退職こそ新たな第2の青年期の始まりであると自分に言い聞かせ、新しい目標を掲げて理想に燃えて人生の再出発を踏み出すのは可能です。
 あるいは左遷や降格も試練の時ですがある意味では人生の充電期であり、魂が鍛えられているのだと考える事も可能です。

 いろんな問題に直面した時にあなたはいくつの解決案を考えられたでしょうか?自分はこれ以外の方法はなくて行き止まりだと思っているかもしれないけれど本当でしょうか?それは今までの自分の経験・常識に合わないとか、誰かが反対するだろうとか、自信がないとかなどの理由をつけて自分で選択枝を勝手に狭めているだけではありませんか?

 実は私たちの前には縦横無尽に走る無数の道があるのです。しかもどんな人にも創造と選択を自由にこなせる潜在能力が備わっているはずなのです。それなのに今までの自分のやり方にこだわりこれしかないと勝手に自分で決め込んで、この資質を十分に使いこなしていないだけかもしれません。
 どんな厳しい境遇におかれても、その中からあなたにとっての最高の人生を花咲かせようと努力すべきです。

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 NO.5 ふりかえること 97.3.1

(自省)

 今まで一度も仕事で失敗しなかった人はいないでしょう。中には大事故をおこし責任を痛感している人もいるでしょう。たまたまの失敗で運が悪かったと思って済ませるだけではだめです。自分の責任と受け止め耐える事も大切です。他人や外部環境のせいにしないでコツコツと実力を蓄え時節到来を待つ自省の姿勢を周囲の人は注目しています。

 自省の姿勢が必要な人の中には能力があり優秀なのにパっとしない人もいます。
 頭の回転が早く学者肌のためチームワークを乱し交渉が苦手で我が道を行くタイプの人です。こんな人は自分の考え方、性格に不自然なものはないか?自分の行動様式が変わっているために人間関係がうまくいかないのではないか?と自問してみてください。

 さかのぼれば幼少時からの特殊事情に原因があって今のその性癖が派生しているのかもしれません。仕事が忙しくて気持ちが外ばかりを向いている時は自分を見失っています。休みの日の気持ちがリラックスしている時に年代を区切って自分史を徹底的にふりかえってみましょう。
 何でも買ってくれる親のもとで育ったので耐える事を忘れわがままになったのかもしれません。頭の良い兄への劣等感のうらがえしで虚栄心が強いのかもしれません。一人っ子のため人とのつきあいが下手なのかもしれません。田舎に育ったため都会の生活のリズムや格式にあわないのかもしれません。
 この時大切なのはその境遇に流されて歪んでしまったのは自分の責任だと思うように努め、できるだけ他人や環境のせいにしないことです。本来の自分が追い求めていた理想像を思いだし周囲の方たちと調和できるように自己変革しましょう。

(集中力)

 皆さんは集中している時は非常にスムーズに疲れも少ないままに仕事が進むのに、集中できない時は以前した事のある仕事にもかかわらず何倍も時間をかけなくてはこなせないという経験があるでしょう。

 労災をおこした人の事故直前の精神状態を検索すると集中力がとぎれている事例も多いようです。
 集中力を高められるかどうかが仕事能率のアップ・事故予防・安全に関わってくるとも言えるでしょう。それでは集中力はどうすれば身につくでしょうか?我を忘れて仕事に熱中した状態(没我状態)が相当するでしょう。心が波立っていない安定した状態です。それに反して仕事への嫌悪感・他人との競争心に伴うあせり・私的悩み事が浮かんでくる時は集中できないものです。

 こうして見ると集中力を高めるには精神的修行が有効だとわかります。
 特にこの情報化社会では情報整理能力が心を安定させるために必要です。そのためには不要な情報をすぐに捨て去れるように自分の人生観にきちんとした幹を作る事です。未来に向けてのトレンド(傾向)はなにかといつも興味・関心を持ちアンテナを張ることにより情報選択能力はさらに高まります。

(失敗)

 職場の中で誰かが仕事のミスや事故を起こした時、周囲の人々の対応の仕方は様々です。ただ単に消極的評価をして、失地回復まで何も言わずに黙って待つケースもあります。あるいは有無を言わず降格・左遷するやり方もあります。これらは一番簡単なやり方ですが、ただそれだけで終わらせては発展の目はありません。

 その失敗を契機にしていかにその人を生かしていけるかは周囲の人の対応にもかかっています。
 例えば当事者がプライドの高い人なら人前で責めてしまうとやる気をなくすだけでしょう。上手な対応をする人なら二人だけの場所で「君ともあろうものがどうしたのか、私は君に期待している、これから取り返してくれると信じている。」と述べて今まで以上にやる気をおこさせることも可能です。
 プライドはないけれどよく教育しないとわからないタイプであれば、なぜ失敗したかをていねいに教えて「2度までの失敗は許そう、しかし3度目は許さないからしっかり心がけてやりなさい」と言うのが効果的です。
 相手の性格タイプに合わせて忠告の仕方を変える工夫をするのが、多くの人材を育てる秘訣だと思います。

 同じ失敗が他の人や他の仕事でもおきる可能性はないかを点検して予防法として活用することもできます。
 さらにその失敗をテコとして全員のやる気を引き起こすことも可能です。「今回の失敗で我が部署の名誉は失墜した。しかしこれは個人の責任ではなく、長である私の責任である。ひとつみんな私の顔を立てると思ってあと半年死にもの狂いでがんばってもらえないか。」このように訓話して雰囲気が変わることもあります。
 失敗の中にもこれからの成功の種がないかを探究する姿勢が大切です。

(成功)

 皆さんは仕事の上でどんな時に成功感を覚えますか?成功の要素とは決して他人のうわさ・評判だけに左右されるものではありません。本心からそれを嬉しいと感じるかどうかにかかっています。

 成功には次の3つの前提があります。

 第1に自分の心の奥のうずきと一致しているものか?
 第2にその功績が会社や社会にとって有用になるか?
 第3に他人の評価・賞賛を結果として得ることができそうだろうか?

 この3点を満たしていれば動き出しても結構です。

 ただし成功に至るためには次の3つの調整を要します。

 第1は他人の考え方や行動パターンが理解できるかどうかです。
 理解できなければ相手が異質な存在としてうつり感情的対立をうみだす事もあります。高い認識力があればその人の言動を見てこのタイプの人はこのようなつきあい方が良いということがわかってきます。

 第2は実行の場所を間違えないことです。
 例えば満員電車の中で体操をしたらどうでしょうか?体のために良いからといっても誰も認めてくれません。

 第3は時間に耐える事です。
 会社の経営でも現時点では資本金も人材も十分でないのに無理して宣伝したけど人が集まらずに経営不振に陥ることもあります。ある程度実績を作り力をためて1年後に拡大戦略をとれば成功していたかもしれないのに、我慢できずタイミングを逸したため墓穴を掘ることがあります。

 この3つのうち自分の努力としていちばんできる可能性があるのが時間です。
 時期を待って、ジタバタすることなく着実にじっくりと力を蓄えて頑張っている人、さらに人によかれと思って生きている方にやがて道は開けていきます。

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 NO.6 心と頭脳 97.4.1

(悩み)

 自分の思い通りに仕事が進まず周囲から不当な扱いを受けた時は誰もが悩みます。挫折や劣等感の虜になっている人は基本的には自分の事しか考えられません。本人にとって重大事件に思える事が他人から見ると、よくあるありふれた話しであることも多いものです。
 そんな時は一度自分をつき放して、自分と同じ境遇におかれている人は世の中にいったいどの程度いるのか考えてみてください。

 悩みの正体は、その悩みを自分だけのものにして独り占めにしているところに大部分があります。同じ悩みの人が大勢いるのだと思い始めた時、その悩みは半分ぐらい消えていくものです。朝から晩までズーと同じ心配事ばかり考えるこだわりの性格の人は悩みがつきる事はありません。さっぱりした性格の人が同じ立場に置かれたら翌日にはすっかり忘れています。
 つまり、厳しい状況があるから必ず同程度に悩みが生じるとは限らないのです。

 悩みは消し去らなくてはいけないものだと誤解している人がいます。ところが本当は悩みは自分が心の中で作っている事を意外と気づいていません。
 悩みがちな人はあまり理屈をこねて自分を正当化するのをいったんやめてください。それよりも自分の性格を分析してさっぱりした性格になれるように努めるべきです。この悩みも何か良いきっかけの始まりかもしれない、将来同じピンチに出会った時の予行練習(予防ワクチン)と思い込むことです。

 青年期の悩みも年配者の知恵でもって振り返れば良き思い出になります。通りすぎると悩みの意味はわかるのですが、その渦中ではなかなかわかりません。長い人生という時間の流れの中で現在の状況を高次な視点から達観して見ると、問題の全体像がわかることもあります。

(心の傷)

 仕事で壁にぶちあたり前に進めなくなった時、思い直して再度がんばってチャレンジして意外と道が開けることがあります。しかしそれでも失敗した時にその経験は心の傷となり深く残ってしまうしまうこともあります。
 過去の失敗は後で変えてしまうことはできません。その傷は完全に消し去る事は不可能ですので、今後の次なる成功をもっと大きくしていけるように専念したほうが良いでしょう。

 私たちはいつの間にか失敗する習慣の奴隷になっている事があります。自分の失敗しやすいパターンを分析し、将来また同じ間違いを犯さないように工夫すべきです。気がついていなかった意外な抜け道があるかもしれません。
 仕事の目標が1つしかないと失敗した時の傷は大きいものです。困難な出来事と取っ組み合っている時に別の面でいつも新しい道を開いておきましょう。人生の多角化を考えて用意しておけば何か1つがつぶれても2番目3番目の可能性が残っており、いつまでも絶望せずにがんばっていけます。
 このようなプロセスで実績をあげていった人にとってはその失敗体験は大きな宝となります。

 中には自分の自慢話はしたいけど失敗体験は話したくない人もいます。そんな人はその失敗が劣等感として心の中に残っておりまだ昇華されていないのです。
 自分の失敗をスマートに、ユーモアを交えて語れる方は劣等感を克服していると言えます。実績を作って成功を重ねてきた相当の自信があるのでしょう。
 年配の方は自分の豊富な経験の中から失敗談を上手に話していただきたいものです。同じ悩みで苦しんでいる若者に対して、その悩みを緩和して勇気と希望を与える事のできる素晴しい教育者になれるでしょう。

(頭脳)

 自分はどうしてこんなに頭が悪いのかと悩んでいる人は数多いでしょう。
 ここで難しいのは、何をもって頭が良いととらえるかが問題です。学生時代は成績優秀で一流の大学を出たからといって必ずしも成功につながるとは限りません。学生時代は成績が良いだけで尊敬を集められますが、実社会ではその人の性格が大きく影響します。勉強ができても暗くてひっこみ思案の性格では成功できません。

 学校で計られる実力は一定期間内にいかに能率的な勉強ができたかという実績と知能指数と記憶力との相関にあります。これは社会に出ての事務処理能力につながります。学歴のある人を企業が新入社員として採用する理由は、手際良く処理が迅速で正確な仕事をこなせる可能性のある人が集まりやすいからです。多くの知識を集められる事が多様な思考判断の材料になります。
 さらに記憶力をつける過程において訓練を重ねれば、長時間の思考に耐えられるようになります。これは社会人になっても可能です。皆さんが長時間似たような仕事に取り組む時は忍耐力を要します。その時どのくらい集中力を持続できるかが大切です。

 結局、社会人になってからの頭の良さには、集中力と持久力がよりウエイトを占めてきます。普段から集中力を鍛える努力を怠らなければ、年をとっての記憶力低下も少なくてすみます。
 毎日一定時間自分より優れていると思われる人の本をできるだけ速読する訓練を継続できればボケる事はありません。年をとっていたとしても、そのうちに鋭い視点が身についたり仕事能力が早くなることもありえます。頭の良い人は知恵をだし、頭の良くない人は汗を流すのが当然の鉄則です。

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 NO.7 欲・プラスの人生・劣等感 97.5.1

(欲)

 私たちはいままで「〜を欲しい」と思いながらそれを手に入れられない苦しみを何度も味わっています。
 例えば素敵な家や車が欲しい、宝くじ・パチンコ・競馬で大金を当てたい、酒やタバコをもっと嗜みたい、美人の奥さんと結婚したい、会社で出世したいetc...こんな欲が出てくるのは私たちの生命力の現われで、しかたのないことかもしれません。

 人間が普通の動物と違うのは皆さまざまな個性を持っており、最高度に自己発揮したいと思い、社会から認められる重要感ある存在になりたいと思っている点があります。
 ですからこの欲が良い方向に向かえば社会の進歩の源となります。

 正当な欲なのかどうかは次の三つの点検が必要です。

第1に、自分の誠実な自助努力の過程を経て達成しようとしているのか?

第2に、他人を害して不愉快な思いを与えていないか?

第3に、その欲は刹那的であり長期に自分を燃やしていくにはあまりにもむなしくないか?

 この3点をクリアーできていればそれは正当な欲望かもしれません。

 中には自分をできるだけ良く見せたい自己顕示欲の強い人もいます。心の中では自分に対する評価に本当の自信がなく、常に他人の評価を確認しないと自己存在が不安定だという思いがあります。
 こんな人は静かにあせらず実力相応の自己発揮を着実に積み重ねていくべきです。

 正当な過程を経て経済的にも精神的にも豊かになるのは良いことです。しかし極端に欲望が肥大化すると、いつまでも満たされない気持ちが残りそれが苦しみになります。結局自我 (自分をPRしたい思い)、自分の物だという欲望が尽きないために苦悩が生じるのです。
 時にはとらわれすぎず「足ることを知る」心境も大切です。

(プラスの人生)

 もしもこの世の中が他人にしてあげることはほとんどなくて、してもらう事ばかりをいつも求めている人たちだけになったらどうなるでしょうか?
 自分自身は何も生みださず、施しを受けることばかりを要求する人をみてどう思いますか?
 もちろん経済活動の中ではgive and takeが基本なのはわかりますが、皆さんの職場の親しい人間関係がそんな形で行なわれたら誠に味気なく感じませんか?
 例えばお返しを期待していそうな人から物をもらうと、なんとなく感謝の気持ちが半減しませんか?見返りを求めるとその行為の徳はなくなります。

 今までの自分の半生を振り返ってみて、人にしてあげたことをプラス、人からしていただいた事をマイナスとして総和してみてください。
 このプラスマイナスが同じくらいでやっと人間として存在が許されると言えるかもしれません。マイナスの多い人は大勢の人に迷惑をかけて生きてきたと自覚すべきです。  自分のしてあげた事は忘れられず、してもらった事を忘れやすいのは平凡な人であり、「ありがとう」の感謝の言葉が少ない傾向にあります。してもらった事をできるだけ記憶しておこうと努め、してあげた事をあっさり忘れていけるのは偉い人です。

 プラスの人生を歩んできたと言う人の中には実は相手を縛っているだけの方もいます。
 例えば子供の受験・結婚を心配する気持ちははたして純粋でしょうか?
 落ちると親の自分が恥ずかしい、こんな女性と結婚されると自分たちが苦労するからいやだと考えていませんか?
 これも見返りを求めた思いやりであり本当の愛情ではありません。多くの人の本当にお役に立てるプラスの人生を歩きはじめましょう。

(劣等感)

 皆から明るいと思われている人でも個人的な悩みは持っています。
 中には自分の肉体的欠陥・過去の失敗体験・学歴・家柄・経済状態・病気・頭脳などで劣等感を覚え、それに気づかれたくないのでみせかけの人生を送っている人もいます。過去のマイナス部分を打ち消せるプラスの部分がないために、ウソでもってふたをしてしまいたい心境なのかもしれません。
 一日中そのことばかり気になるため周囲の人からはかえって見破られやすいものです。
 人に知られてしまう事を恐れてもしょうがないのです。それよりは今から未来にかけてあなたがどれだけ素晴しいかが大切です。

 これらの劣等感は努力で克服できるものもあります。
 例えば家が貧しいため希望の学校にも行けず頭が悪い、これは親の責任だと思っている人がいるとします。しかし社会に出てからも専門技能・国家試験の資格をとれる機会は多く、積極的にチャレンジしないで自己弁護しているだけの事もあります。
 肉体的欠陥は努力してもどうしようもないのであきらめて、他の点で自分を伸ばしていくしかないでしょう。考えるだけで損ですからあっさり忘れてしまう事も幸福への道です。

 あの有名なカーネギーは幼いころ事故で指を1本失っています。しかし自分の半生を振り返ってみると、一生懸命に積極的に生きることに熱心であったために指が欠けていたのを思い出す暇もなかったそうです。
 劣等感でこだわることの多い人は、より大きな価値を求めて積極的に生きていないのを証明しているといえるでしょう。
 大きな理想をかかげて精一杯生きているうちに、その劣等感もとるに足らないもの・どうでもよくなっていくこともあります。

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 NO.8 自虐・貧乏性・ネクラ 97.6.1

(自虐)

 最近は学校のいじめの問題が注目されていますが職場にもあります。
 ネクラな雰囲気は幼少時からのいじめられ体験の蓄積の結果形成されてきますが、本人の潜在意識の中に人から害されるのを期待する傾向性を認める事もあります。念の方向性として外に向かって他人を批判するのではなく、内にこもって自分を責め続ける傾向のある人です。
 「自分は弱いのでいじめてください」という外見が表われています。

 若いころは自信満々だったのに社会に出てから自虐的になる人もいます。何度も失敗を繰り返した結果できあがった性格です。
 失敗を恐れてこだわるタイプであり、良く言えば繊細な性格でもあります。繊細さが良い方向に行けば素晴しい芸術者・文学者になれますが、悪い方向に向かうといつも失敗を予測するようになり、事前に苦しみを予想しておいたほうが心の準備ができて楽だという人生観で固まってしまいます。そんな人は不思議とわざわざ自己暗示・催眠術をかけたように失敗する方向へ陥っていきます。

 失敗予想の言葉を発して再度その通りに失敗したとして、それはあなたの望んでいる姿でしょうか?まず自分が客観的に見てそのような考え方をしやすいという事実を受け入れるのが出発点です。それから自分を責める思いや言葉は捨て去りましょう。
 過去に失敗をしても、これから未来へ失敗が続く保証はありません。公平に考えれば可能性は五分五分です。世の中には失敗をしてもあまり気にしないさっぱりしたタイプの人がいます。「この失敗は確かに自分の責任で申し分けなかったが、将来に向けて同様の失敗をしないための良い教訓が得られた。この失敗を生かしてさらに発展的な仕事ができるぞ。」と決意できる人もいます。

(貧乏性)

 精神的安定を保つ前提として経済的自立が大切です。
 借金貧乏で悩んでいる人の中には金の使い方が下手な人がいます。普段は小さなところで一生懸命に倹約しているのに大金を手にいれるとすぐに有頂天になり競馬、競輪、マージャン、株などの投機的な事に盲目的につぎこんで水のアワにしてしまいます。こんな方にとっては、入ってきた金を少しずつ蓄えながら徐々に豊かさを味わう堅実な生き方が大切です。

 貧乏性の中には仕事貧乏と言える人もいます。
 いつまでたってもうだつの上がらない仕事にあまんじている人です。自分はどうせこんなもんだと自己限定し、新しい工夫・発見をしていこうという向上心がない人です。
 常にもっと自分を生かせる場がないかを研究し続けるべきです。

 貧乏性の人の潜在意識下には「金銭は罪悪だ」「贅沢は敵だ」という信条が潜んでいることもあります。経済的困窮と戦うのを生きがいと感じる自己犠牲的な潜在意識があります。こんな人は大きな成功のチャンスが来そうになると、逆に不安・心配が強くなり行動に移せず結局失敗してしまいます。「豊かになるのは良いことだ」としっかり心に刻み込むように念じる習慣をつけましょう。
 貧乏借金生活者では世の中が悪いと思ったとしても何もできません。しかし経済力のある豊かな人なら影響力も強いですし、正しい金の使い方さえすれば世の中をよくする方向で自己発揮できる可能性があります。つまり経済力を社会の役に立つ方向に使うのはより大きな価値であり善なのです。
 貧乏から脱する前提条件として心の貧しさを改めねばいけないことがわかってきた時が新たな出発です。

(ネクラ)

 自分はなにをやっても失敗するのではないかと不安感に怯えている人はいませんか?過去に成功体験が少なく何度も痛い目に合っている人は、頭の中のその残像がなかなか消えません。
 別の視点から見ると、他人への配慮に欠ける自己愛的なタイプです。ある意味では危機感知能力が優れているのかもしれませんが心に安らぎはありません。

 中には良い話を聞くと逆に心配したり、自分の人生が開けそうになると潜在意識下でそんな馬鹿な事はないと思い、暗示にかかるように失敗を繰り返し、さらに確信をもってネクラになります。
 誰でも失敗をしたら落ちこみますが、その悲観的な見方にその後どのくらい長くひきずられるかは人によって様々です。悲観的な事を考える時間をなるだけ圧縮・短縮していく工夫、できればすぐに断ち切り忘れる習慣を身につけたいものです。良い意味での物忘れを意図的に多くしていくのです。

 さらには身の周りにある喜びの種を積極的に発見してみましょう。
 例えば会社でおもしろくない事があったとしても、家に帰るといつもは料理の下手な奥さんがたまたま上手な料理を作る事もあるでしょう。この素朴な出来事を大きな喜びと感じとることです。喜びの種は実は身の周りにはすでに多くあるのですが意外と気づいていないものです。
 一日一善という言葉がありますが、一善をなさずとも毎日自分の周りの何か良い材料をひとつだけでも見つけようと心がけて下さい。

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 NO.9 苦悩・自己顕示・人の輪 97.7.1

(苦悩)

 私たちは人生の途上で理想を求めて自己発揮・向上していこうとした時、現状とのギャップで苦しみます。

 結局、満たされない思いが苦しみになっています。
 この悩みも高い認識力を持ってながめてみると簡単になくせる事もあります。ある人が3年間苦しむ問題も、別の人だとわずか1日で解決できることもあります。

 問題の本質が見えていないだけの事もあります。今の自分が直面した問題点の本質をはたしていかに見抜ききれていたか?主体的な努力を怠っていなかったかどうか?を振り返ってみてください。
 多角的な見方ができると、自分はこれしかないと思って悩んでいたのが実は思い込みで、他の観点から見たら簡単に処理できることもあります。

 さらに深く考えれば、苦悩に至った原因が自分の過去の考えと行動にあることにきづきます。
 今の自分の境遇は過去の人生の岐路で自分の判断のもとに選んできた結果なのです。優しく善行を積んできた人は周囲の人から自然と優しく接していただけるでしょう。自分中心の考えだけで他人との調和を乱して生きてきたのなら年老いて不幸な人生が待っているでしょう。
 過去の自分を振り返り分析してみて、この苦しみも自分が悪かったからでしょうがないと思えたらそれだけでも苦しみは減っていきます。

 「老・病・死の苦しみ、苦手な人と顔を合わせなくてはいけない苦しみ、好きな人と別れる苦しみ、欲しい物が手に入らない苦しみ、食欲の満たされない苦しみ」これらの苦しみからは誰も逃れる事はできません。満たされない思いが尽きずに欲望が肥大化すると、さらに苦しみが増大していきます。
 あまり1つの事にとらわれず貪欲になりすぎないように注意しましょう。

(自己顕示)

 優秀な人は必ず多少のプライドを持っています。
 プライドも度を越せば、それが自己顕示欲となり多くの人を苦しめます。基本的には自分を客観視できず過大評価してしまった時で、次のケースがあります。

 第1は、他人の自分への評価が不当に低く感じられた時、

 第2は、他人の自分への評価があまりにも高すぎたためそれが自分の実力だと誤解して思い上がってしまった場合、

 第3は、他人の悪い所ばかりを強調して見つめてしまうため、自分をPRしたい気持ちが強くなり相手を見下してしまう場合、

 第4に、他人が高く見えすぎて劣等感の反発心から分を越えた言動をとってしまう場合です。

 自己顕示欲の根底にあるのは、人間の持つ絶えず自分を伸ばして拡大していきたいという欲求です。堅実な実績を重ねて正当な範囲でのプライドを持つのは人間にとっての当然の生きがいであり、社会発展の原動力になり悪いことではありません。
 ところが、他人の伸びたい欲求とぶつかった時にその自己顕示欲は嫌われます。

 社会が発展していくためには進歩と調和という2つの違ったベクトルを上手に合成させなくてはいけません。自己顕示とは、進歩が突出して調和がなおざりになっている状況と言えます。
 したがって、解決のためには次の3つの実行が大切です。

 第1は、謙虚に静かに少しずつ自己発揮をして進歩のスピードをゆるめてみることです。

 第2には、自己発揮が周囲の人への妨害・停滞・退化にならないように、他人を押し上げていける工夫・努力を怠らないことです。

 第3は、他人のために尽くすことです。

 自分のあげた手柄を自分だけのものとせずに他の人へ還元していこうとすれば、それは正当なプライドだといえるでしょう。

(人の輪)

 大勢の人の話しの輪に溶け込めず悩んでいる人はいませんか?孤独感を覚え自意識過剰になり苦しんでいる人は意外と多いのです。

 中には自分の身体・能力・性格などに特定の大きな劣等感を抱いているケースがあります。人前では突然多弁・雄弁になり大きな事を言うのに、後で一人になった時、本来もっと内向的な性格なのに馬鹿騒ぎをしてしまう自分を嫌に感じてしまい、だんだん人前にでれなくなる人もいます。あるいは大勢の人の前で馬鹿な事を言うかもしれない恐れ・不安感から黙ってしまう人もいます。
 これらには、ありのままの自分を隠して他人に自分を良く見せたいという虚栄心が根底にあります。

 そんな人は、普段から周囲の人と話題を合わせられる情報を集めておきましょう。
 自分はもっと高尚な趣味を持っているから低俗な話題はできないとは思わないことです。本当に高い教養ある人ならば、あらゆる立場・性格の人に合わせて話しができるはずです。高尚な話しならできるけれどレベルの低い話だとできなくなるのなら、まだ自分は勉強不足で精神的にも未熟なのだと自覚すべきです。

 結局、人の輪にはいれない人は自己保身と他人への関心・理解不足があるといえるでしょう。他人の人生観の中で自分も共感できる価値感を数多く発見できた時、その積み重ねが本当の意味での自信(宝物)だと認定できるでしょう。

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 NO.10 気品・夢・こだわり 97.8.1

(気品)

 私たちは、どんなに金持ちで高い地位にある人でも挙動不審で顔つきが貧相であったり、教養を感じさせない雰囲気が漂っているならば素晴しいとは思いません。本当に成功した人なら気品ある香りがあります。
 そんな人は次の3条件を満たしています。

 第1は、いろんな相談や悩み事を受けた時に、その人に合った解決法を提示できる高い認識力を持っています。

 第2は、周囲の人達への感化力が強いことです。
 言葉と行動で人々を教導するだけでなく、無言にてその徳あふれる雰囲気でも影響を与える事ができるのが本当の教育者といえるでしょう。

 第3は、寛容な心を持てることです。
 優秀な人は他人の気持ち、悩み事がよく見えてくる事があります。その時注意すべきは、他人の考えや行動の特異な癖あるいは性格上の欠点が気になってしかたなくなり、思わずその人を裁いてしまいたい傾向がでてきた時です。
 他人を裁く習慣のついている人は『心の狭い』という印象を受けます。裁く思いが強くなった時は、どうしてもその人を許せない・我慢できないという気持ちがいつまでも残ってきます。しかし寛容な気持ちでいる時は、たとえ同じ誹謗・嘲笑の言葉を受けても、その人の欠点やいたらない部分がかわいらしく見えてくるものなのです。
 寛容さの基礎には確実な自己観照が必要です。自分も不完全だが多くの人のおかげで今まで生きてこれたのだという認識ができた時、他人への感謝・寛容さが自然に出てきます。

(夢)

 子供の時に将来はこんなことをしたいと夢で胸を膨らませたこともあったでしょう。しかし年をとるにつれて社会でもまれ、結構現実は厳しく夢が砕け散ったこともあるでしょう。

 自分の理想を成就しようと思ったけれどその時点では才能不足を実感する場合もあります。がんばって能力を発揮しようとしたのに現実には生かせる場がなくてがっかりする場合もあります。
 普通の人ならここであきらめて少しずつ志を小さくしていくでしょう。
 しかし世に成功者といわれる人は、壁にぶちあたっても夢を大きなままで維持し続けれる方たちです。長く夢を描き続けれるなら、それはその人の強い興味関心領域であることを示しています。その中に才能が眠っていることが多いのです。

 自分は非凡で才能もあり頭が良いと潜在意識下で思っている人ほど、新しい事に目が向きすぎて大成しないこともあります。これは平凡性の自覚が足りないため、同じ事でずーと頑張ろうという粘着力が弱いのです。
 自分の関心領域(勉強・運動・趣味)をとりあえず3年間掘り下げて努力してみてください。自分の環境は毎年どんどん変わっていきますので、3年間実践できれば才能も花開き、発揮できる場が巡ってくることもあります。
 3年間の実績である程度自信ができたなら、その領域と関連づけながら次の関心分野に移っていき、自分の器を広げていく事が大切です。これが本当のマルチ人間といえるでしょう。
 自分の興味分野を浅くかじりすぐに飽きてしまい他の分野に目移りする人は、なんでもこなせる人間をめざしているのかもしれませんが本当の自信は生まれてきません。
 結局、粘り強い努力と夢を描き続けることなくして一芸に秀でる道は開けてきません。

(こだわり)

 こだわりにも良いものと悪いものがあります。
 良いこだわりとは将来に向けて健全な発展向上の原動力となるものですが、他人の忠告を無視して我が道を行く時にそれが悪いこだわりになることがあります。

 過去の失敗にこだわってクヨクヨしている人もいます。そんな人は上司に叱られるともう自分は全くダメだと思いこみます。ところがある人は、同様に叱られているのに自分はそれだけ期待されているのかと考えます。
 この感じ方の違いの積み重ねが、その後の両者の仕事能力の大きな差となって現われます。

 過去の人生に大きな失敗・不幸体験がありそれが不治の心の傷となり、巨大なこだわりとなっている人もいます。その傷を見つめすぎないで、希望を持って前向きの人生を歩む決意をすべきです。
 まず一歩踏み込んで、小さな成功体験を重ねてきっと伸びていけるんだと自分自身に言い聞かせてみましょう。世の中には自分の協力者が大勢いる、厳しい上司も潜在的協力者なのだと思い込む努力をしてみてください。

 また、良い事はすぐ忘れ悪い事をいつまでも忘れられないのが我々凡人の傾向性です。素朴な事にも喜びを感じ続けられる人が少なくなっています。これも物質的に豊かになりすぎたための反動かもしれません。
 良いことは大きく、悪いことは小さく受け止める心の持ち方を習慣づけましょう。
 ある人があなたに悪口を言ったとしても、たまたま体調が悪く悩み事があったのかもしれません。相手は翌日にはすっかり忘れているのにあなたはその出来事を何年も思い続けます。誠に損な生き方です。
 自分の心は誰もが自由にコントロールできるはずなのです。潜在意識で自分はこんなものだと規定する思いこみが不幸の始まりです。

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 NO.11 愛の貸借表・情報過多 97.9.1

(愛の貸借表)

 私たちは時として自分は相手に好意を抱いているのに、相手が自分に好意を持ってくれないと苦しみます。夫婦・親子・職場の人間関係のあらゆる状況でおこります。
 これは、自分が期待しているほど相手が自分に優しくしてくれないと思うから苦しいのです。しかしそれは本当でしょうか?

 自分が生まれてから現時点までの半生を振り返ってみてください。
 両親・兄弟・友人・知人に今までしてあげた事と、していただいた事を貸借表にして書き出してみてください。例えば母親だったら、「母の肩をもんであげた」ならしてあげた事、「母が遠足の弁当を作ってくれた」ならしてもらった事というふうに思い出してみてください。

 その時してもらった事はたくさんあるのに、してあげた事があまりにも少ない事実に気づかされます。もしもそんな事はないと言う人は忘れているだけなのです。
 してもらった事は忘れて、してあげた事だけを覚えている人は恩知らずの人かもしれません。自分はすでに多くの人からお世話になっていたのだと気づいた時、これからは人に優しく生きていこうと決意できます。

 してもらう事ばかりを考えている職場は愛の酸欠地帯です。
 相手に要求する前に、まず自分がしてあげられる事は何かないかを常に考えられる習慣を身につけましょう。この時、自分がこれだけしたのだから後から何かしてほしいとは思わないことです。
 人に与える側の人生を選ぶか、与えられる人生を選ぶかで運命は大きく変わります。

(情報過多)

 マスコミの発達で現代社会は価値観が多様化しています。
 同じ業種の企業間の競争も激しくなっていますが、これから伸びていく企業の鍵はこの『情報』という資源だと思います。

1.高度に付加価値のある最新情報を多く収集できる企業
2.安全性を高める技術に長けた企業(例えばBSでは耐震ゴム)
3.従来業務の能率化効率化を押し進める情報を持ち時間短縮に努力する企業

 これらの特徴ある企業が脚光をあびてくるでしょう。

 そんな時代に対応できる人とは、学ぶ能力の高い人だと思います。
 過去に大学・専門学校で勉強してきた事、資格をとり経験で蓄積してきた事にあまりにもとらわれすぎて自分の仕事のパターンに固執したままではもはや時代遅れです。新しいものを学び取り入れて、今の仕事をより高度に効率良くしようという柔軟な精神を持った人が重用されるでしょう。
 この変化の多い情報過多の時代では、いかに価値ある情報を選びとれるかが大事です。そのためには、古い知識を捨て去れる知的排泄力と、感情に流され誤った情報に翻弄されないような心の安定を保った上での効率的集中力が必要です。

 自分たちが現代文明の中で物質的に豊かに暮らしていけるのは、多くの先輩たちが汗をかき創意工夫して勉強を重ねていった技術的蓄積のおかげです。だからこそ自分たちも過去の技術情報だけで満足することなく、後世の人達のために新しいより良いものを残していく義務があります。
 一部支配階級の抑圧から解き放たれたフランス革命時の人権宣言(自由と平等の権利)は、現代のようにある程度生活が豊かになり、数多くのチャンスに恵まれた社会ではもう時代遅れです。これからは智恵を持つ義務と慈悲を発揮する義務が重要になります。

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 NO.12 健康投資・忠告 97.10.1

(健康投資)

 皆さんは健康のためにどの程度の運動をしていますか。1ケ月の収入のうちどれだけのお金を健康のために費やしているかを考えた事はありますか?
 健康のための経済的出費を惜しんで毎日をすごした場合、必ず後から高い代償を払わされます。健康への投資は必要経費であり、善であるという発想が必要です。

 例えば1ケ月の収入が30万円の人ならば、そのうちの一割(3万円)を健康のために投資するという事です。運動不足の人ならば、エアロビクス・水泳・ゴルフに金を使っても良いでしょう。肉体労働の方は体を休めることに費やすことも可能でしょう。読書や絵画を描いたり、温泉に行ったり、普段食べないご馳走を味わっても良いかもしれません。
 経済的余裕のない時は時間を有効に使うしかありません。原則は歩くことです。
 いつもより30分早く起きて、歩いて通勤するとか自動車をやめて自転車通勤に切り替えるとか、休日の決まった時間に運動するなどの工夫が必要です。

 独りきりの運動は継続するには大変な忍耐力が要るので三日坊主にになりやすいものです。
 家族・友人たちと約束しあって、楽しい運動仲間を増やしていきたいものです。

 生活習慣病(成人病)予防のためには、最低週1回の運動が必要です。週3回以上の運動ができれば体力増進とともに積極的思考の持ち主になっていけるでしょう。
 体力増進により仕事の疲れが減り、集中力も高まり、より発展的に業務がこなせましょう。
 頭脳労働者は体に投資して、肉体労働者は頭に投資する事が心と肉体のバランスのとれた健康維持に役立ちます。

(忠告)

 職場の部下や同僚が明らかに仕事上の問題点をかかえており、このまま放置すれば失敗すると気付いた時に忠告が必要な事があります。
 厳しく叱ることも相手を生かして救うのであれば形を変えた思いやりです。ただしここで注意するべきは、相手の性格によって対応の仕方を変えることです。

 第一に、プライドの強い人の場合は人前で罵倒しないことです。他人がいない所で個別に会って忠告するべきです。

 第二に、物事にあまりとらわれず気にしない陽気な人の場合は、根に持たないので派手に叱りとばすほうが有効なこともあります。
 特に人望のある人の場合は「みんなの代わりに彼が怒られている。頑張らなければいけない。」と思われて、全員の意識が高まります。そして忠告した翌日はもう忘れたような顔をしてカラッとしておく事です。

 第三に、よく失敗する人の場合はミスをしそうな前に忠告することです。その人固有の失敗パターンを理解し、事前にチェック項目をくりかえし言って釘を刺すことです。時には仕事の責任範囲を限定することもやむをえません。
 部下のミスが見えないのも上司の責任です。その人の器・能力に合った適正な仕事に当てるのが理想的です。

 昨今はリストラが進み、社員1人あたりの業務が拡大しています。専門職の人でも幅広く未経験分野にまで関わらなくてはいけない時代になってきました。管理・監督者の中には思い通りに適材適所への人員配置できず、苦渋の選択を断行しなくてはいけないこともあるでしょう。
 この理想と現実のギャップも大きなストレスを生んでいます。その緩衝剤にあたるのが社員間のコミュニケーションであり、その時の互いの忠告の仕方も大きく影響してきます。

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 NO.13 忍耐・調和 97.11.1

(忍耐)

 職場であなたを拒絶するように思える人、冷たくされるように思える人がいた時にどのように対応していきますか?
 嫌悪感でもって接するとさらに溝は深まります。しかし誠心誠意あたっていった場合は、例えその要望が受けいられる事はなくても人柄の良さは認めていただけるものです。それだけでもいくらかの点数をかせいでいます。

 思い通りにならないから自分はすべて駄目だとは考えないことです。
 努力した結果が認められれば100点、認められなければ0点と単純に判断する人もいます。少なくとも努力した事は0点ではありません。失敗から得られた教訓を蓄積しておけば次回同様の機会がおとずれた時にクリーンヒットを打てる可能性もあります。

 例えば合格点が60点の仕事があるとして、周囲からは50点の評価・素質を認められている人がいるとします。しかし本人は勝手に自分に見切りをつけて0点と思いこみます。
 普通ならもう駄目だと思われるところでも不屈の精神で前進している人を見ると、周囲の人は徐々に見方を変えていきます。「この人はあの程度の実力だと思っていたが意外な面がある。もしかしたらなかなかの人物かもしれない。」と思い、このまま頑張れば何年か後には60点以上の実力になるだろうと予感しています。
 にもかかわらず、凡人の場合はその時点だけで自分なりに限定して判断しあきらめるのです。時間に耐えて努力した人が人生の成功者・真の実力者になれるといえるでしょう。

(調和)

 毎日の仕事に疲れて「今日は出勤したくない。家で寝ていたい。」と思う人はいませんか?
 自分一人だけならそれも許されるのかもしれませんが、妻子の養育費を給料でかせぐためには不愉快であっても我慢して働かないといけません。仕事も、他人との関わり合いの中で共同して目標達成を目指すなら、自分の自由意思を一部制限して全体のプラスの方向を選んでいかなくてはいけません。

 このように、私たちは個人の喜びを少し犠牲にして家族や会社のためにより高度な喜びを産み出すように行動します。この時に自己制御し善なる方向へ選択していく事が、調和させながらの適正発展といえるでしょう。
 自分の判断でどんな行動を選びとるかで善悪は生じます。その背景として「相手と自分の関係を十分に把握しているか?」「行動をおこすタイミング(時間)は適切か?」「行動をおこす環境(場所)は適当か?」の3点を考慮してから動き出してください。

 ある人とたとえ対立関係にあったとしても二人の関係を一度白紙に戻して別の視点で見直すと、自分が今感じている善悪とは違った基準があることに気付きます。自分をきっかけにして彼にも苦しい人生体験を与えているのかもしれません。
 誰もが人生の途上でいろんな間違いを犯して手探りの中で生きている状況です。他人の悪は小さく見て、自分の善も小さく見て、手を携えて角を引っ込めて気持ち良く働きたいものです。

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 NO.14 固有の人生・疲労 97.12.1

(固有の人生)

 他人との比較で自分を見た時に満足ができなくて嫌になることもあるでしょう。その方の優秀な仕事能力、都会育ち、容姿端麗など劣等感の種はつきないかもしれません。しかしあなたの目からはうらやましいと見える彼も、本当は、どうかはわかりません。誰もがその人特有の悩み・苦しみがあります。それらの幸福そうに思える一面のみを見てその人の本当の悩みを見ていないのが自分の迷いの姿かもしれません。
 他人の素晴しい所だけを見つめて自分の惨めな所と比べるのは公正な見方ではありません。あなたの低い自己評価も中には高く評価している人もいます。あなたが「あんなくだらない人生」と思っている人の中にも実は素晴しい生き方があるのかもしれません。

 すべてお互いの目からは物事は相対的に見えます。皆が固有の人生を送っており、自分と他人との間でその身を置き換えたところで何も得るものはありません。自分の名前で他人の人生を生きるのではなく、自分の名前で自分の人生を生きることが大切です。自分の固有の人生をもっと愛して抱きしめることです。他人の実績をうらやまず、その場で自分なりに全力を尽くして仕事をこなすことです。

 他人の良い評価・賞賛がないので自分の人生が虚しいとか無駄だとか考えるべきではありません。あなたの手がけた製品・サービスを受けた消費者・顧客からはあなたへの直接のお礼はないかもしれません。しかし多くの方の喜ぶ良い品物(サービス)を提供できる事を自分の悦びと感じようとした時に、新たにやる気がわいてきます。
 皆さんのそんな思いの結集で作られた製品は、品質の向上をもたらし会社のさらなる繁栄・発展を促します。それを喜びと感じとることです。

(疲労)

 健康でエネルギッシュな人は体力不足の人に比べて悩み事が格段に少ないものです。悩み事が多い理由には、単に疲労しているだけの事もあります。
 朝目覚めた時にスッキリして朝食もおいしく感じる人なら難問題にぶつかっても比較的短時間に解決できますが、朝はすぐに起きられず、朝食もまずく感じて摂取せず、人に会うとすぐ不機嫌になりやすい人にとっては巨大な難問に思えてしまいます。

 疲労が少なければ効率的に仕事に集中できます。しかしどんな人でも連続して3時間以上集中し続けるのは困難です。従って朝から夜遅くまで働いている人は、午前中に比べて夕方以降は能率が落ちてきます。重要な仕事はなるべく午前中のうちに済ませて、単純な整理作業などを夕方から始める工夫が大切です。
 工場の機械は能率は落ちませんが人間はそうもいかず、その結果さらに集中力が低下して事故につながりやすいものです。仕事し始めの2時間以内は事故発生率は少ないとの説もあります。2〜3時間頑張れば短時間でよいから休憩をとることです。この10分の休みを惜しいと思う人は残りの数時間を無駄にしてしまいます。

 ずっと立位で働いている人は腰と足に疲労がたまります。休み時間には体を横にしたり腰を伸ばしたりしてくつろぐ姿勢もとってください。
 モニター画面や細かい活字を見つめてばかりの人は目が疲れます。目の疲労は頭脳にも影響しますし、胃腸へも影響して神経質になり被害妄想的思考に陥りやすくなります。小さな活字の書物は避けて明るさを調整し、目と画面の距離を最低30cm以上離して姿勢を正すことです。1時間に5分は画面から目を離して立ち上がって背伸びをして気分転換をはかりたいものです。

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 NO.15 成功の条件・学習 97.12.30

(成功の条件)

 優れた専門技能を持ちながらいまひとつ成功しない人には共通の特徴があります。

 1番目は寛容な心が足りない場合です。
 自分の特殊な才能を過信して鼻にかけて他人を見下す傾向のある人です。優秀で鋭い分析能力を備えた人は他人の欠点がやたらと目につき、つい暴きたてたくなります。寛容な人は他人を責めることなく、大勢の人を包みこむ優しさがあり、傍にいてくつろげる雰囲気があります。

 2番目は感謝の心が足りない人です。
 仕事がうまくいくのは自分の能力だけではないのに「自分一人の力で成功したのだ」と誇示する人です。その雰囲気に対して周囲の人は反発してだんだん遠ざかっていきます。大成功をおさめた時に感謝の心が欠けていると周囲から批判を受けるようになります。「これは皆様の協力のおかげなのだ。」と感謝の気持ちが増していく人を捉えて批判するのは極めて難しいことです。

 3番目は謙虚な心が足りない人です。
 感謝の心が磨かれて本物になるためには謙虚・謙譲の心が必要です。成功すればするほど「自分の力ではない。まだまだ自分は発展途上なのだ。」と思い続け、失敗した時は「これはまだ自分の努力が足りないのだ。自分に期待していただいた方たちに対して申しわけない。」という良い意味での自責の念を持たねばいけません。

 才能を磨き頭角を現わしていく過程で他人とのあつれきが生じます。この時に寛容・感謝・謙虚な心を抱き続ける事ができたなら実りある大成功を維持できるでしょう。

(学習)

 仕事の実力を高めるためには学問と経験の基礎の両方が必要です。

 学問も学校で習うものと個人が独学で学ぶものの2種類があります。独学のみで教養を身につけて成功している人はハンデイを乗り越えて頑張ッた実績があり人並み以上の精神力が身についている事もあります。

 経験から学ぶというのは特定の仕事をした年数が長いので精通するということです。経験から学ぶ時の注意点は、ただ漫然とこなすのではなく、その仕事に関して「道を究める」気持ちでもって精通することです。
 経験から学ぶのが下手な人はその仕事を舌ざわり手ざわりといった感覚的なものとしてしかとらえられず、その経験から知的な教訓を体系化して身につけるのが苦手な傾向があります。
 いろんな経験の中から成功や失敗の理由を丹念に分析して学びとっていった人は、経験そのものが大きな知恵となり、やがて他人を指導できる器を兼ね備えた人物になれる可能性もあります。さらには経験から学べる人は他人の経験からも教訓を発見できます。他人に対する関心を片時も忘れず、自分の未経験分野あるいは自分が経験した以上の事までも学ぼうとします。聞くことにおける達人はそれだけでも優れた面を持っていると言えるでしょう。

 学歴にこだわる人の中には人から学ぶのが下手な人がいます。
 日々進歩し流動化の激しい現代社会では、10年以上前に学校で勉強したことが今は役に立たなかったり常識からはずれていることもあります。既成観念を取り外して0から学ぶ姿勢も時には必要です。

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 NO.16 幸福の多角経営・過去と未来 98.1.31

(幸福の多角経営)

 人生の始めから終わりまですべて順風満帆に過ごしていくのはまれです。たいていの人は自分のめざす方法が行止まりになっていたり、得意の絶頂に挫折したりの経験を味わっています。
 これさえうまくいけば、あるいはこれさえ維持できれば幸せだという人は、一見筋の通った力強い生き方をしているように見えてもどこかでポッキリと折れてしまうことが多いようです。

 例えば子供だけが生きがいだという母親は子供が成人した後むなしくなり、妻をめとったいい年齢の息子にあれこれ干渉して嫁姑の問題をおこします。夫だけが生きがいと感じている妻は夫の帰宅時刻が遅いと嘆き、土日も夫が話し相手をしてくれないと愚痴を言ってだんだん不幸になります。会社での出世だけが自分の人生目標だと思う人は、働き蜂のようにがんばり誰よりも遅くまで残業し熱中するあまり、周囲の人を寄せつけない孤独な性格になります。そして自分の出世にもはっきり先が見えて、定年退職後の目標を失った時に人生の不幸を感じます。

 このようにたった一つの幸福だけを求めると、どこかで歯車が狂った時に幸福の極端から不幸の極端へと人生がブレてしまいます。
 幸せとは、本来もっと豊かなものであり単一のものからしか得られないものではありません。いろんな方面から幸福は見い出して感じ取っていけるはずです。いろんな事象からの幸福感知能力を高めることにより、どんな不幸の出来事が襲ってきても簡単には挫折しなくなります。何かがつぶれても別の幸せの種があれば複眼的に自分の幸せをとらえることができます。
 幸せの多角経営を努力目標とすることで人生に厚みが出てどんな苦境でも乗り越えていける人生観を抱くことができます。

(過去と未来)

 過去の出来事を5年も10年もいつまでもくよくよし続ける人がいます。自分の不幸な境遇を哲学者のように分析し周囲の人に言って回る人です。
 自分の不幸の理由を完全に説明できて、だからだめなのだと言って幸せになれるでしょうか?不幸や失敗を乗り越えてついに自分は幸福をつかんだと言えるまでは黙っておくのが賢明です。過去のまちがいは一度徹底的に分析してそれを教訓として身につけるのは大事ですが、その後はその出来事の記憶はサッパリ忘れ去り自分を許すことも大切です。

 まだどうなるかわからない、はるか先の未来についてあれこれ心配して取り越し苦労をする人もいます。深層心理学的には、みずから恐れているものを招き寄せる傾向性のある人です。
 不安の念をいつも所持していると、その念に呼応して不安な事柄を引き寄せてしまいます。不幸の予言者になって予想通りに自分が病気になったり仕事に失敗したからといって何の自慢にもなりません。もちろんおこりうる将来の失敗の可能性を分析し事前に逆算して対策・準備する慎重さは大事です。ですから不安と慎重さは切り離して考えるべきです。不安は現実になった時に悩めば良いもので不安を前借りしないことです。

 過去と未来の不幸な出来事の陰におびえすぎないようにして、今日一日を精一杯生ききることです。後悔の過去・不安な未来という考え方を捨て去り、許しと教訓の過去・希望と慎重さを兼ね備えた未来へと観を転回することで、現在の自分を明るく輝かして肯定的にとらえることができます。

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