生活人コラム



 INO.VOL.8 臓器移植と再生医療

 [執筆者]
 井上 透
 [紹 介]
 ブリヂストン健康管理センター勤務の産業医。大学講師。医学博士。
 企業の健康管理センタ−に所属して、社員の肉体的および精神的な方面まで含めた総合的な健康管理の仕事をされています。



 NO.1 臓器移植 2001.12.1

<自己紹介>

 私の専門は元々が循環器内科でして、研修医時代は心臓病を中心に臨床経験を積みました。その時の私の主任教授が厚生省から委託の心臓臓器移植研究班の班長で、移植医療を推進する活動を展開していました。

 途中から、同じ医局にある腎臓・高血圧グループに所属し透析などを含めた臨床研究を重ねました。その時に透析という人工臓器を通じての臨床経験も積み、さらには親族間の生体腎臓移植の主治医になったりなどの貴重な体験もしました。

 その後、全人的医療を求めて8年前にブリヂストンの産業医として転身し、予防医学の道を歩み始めました。

 最新の生命科学を勉強してみると、バイオ技術のめざましい進歩に驚嘆しました。医学の常識が覆る革命的な基礎研究が世界の各所で静かに進行しており、その中でも臓器移植に変わりうる再生医療の研究に着目しています。

 私の出身医局の後輩が再生医療の最先端の研究(骨髄内の幹細胞分画である単核球を抽出して血管再生に成功する臨床研究)に携わっていたので、直接取材をして研究現場の実態調査もできました。

 臓器移植については私の臨床経験を中心に、そして再生医療に関しては現時点の最先端の概要をまとめてみました。私の個人的見解も併記してみましたが、皆様にとっての参考レポートとなれば幸いです。


<臓器移植後の管理と成績>

 心臓移植を受けた患者さんは日本でもまれなので私にも臨床経験はありませんが、生体腎臓移植後の患者さんならば数人受け持ち外来観察の経験はあります。

 術後管理の中心は拒絶反応抑制と感染予防です。多分、心臓も腎臓も移植後の管理は類似していると思います。

 1983年以降にサンデイミュンという免疫抑制剤が臨床応用され拒絶反応は減りました。

 それでも1999年のアメリカでの調査では、腎臓移植後の患者さんの生存率は、1年:96.3%、5年:90.4%、
 (生体腎)生着率は、1年:93.5%、5年:76.6%、
 (死体腎)生着率は、1年:87.5%、5年:61.0%、
 5年を過ぎると3−4割は生着できません。

 だいたい5年以上生着すれば医療経済的に見ても透析にかかるコストは賄えます。腎臓の場合は拒絶反応で再度腎不全に陥っても、また透析に戻れば良いという安心があり、生着率に比べると生存率が高いのはそのためだと思います。

 一方、アメリカでの心臓移植後の患者さんの生存率は、1年:85.8%、5年:69.4%。心臓の場合は拒絶反応は死を意味しますので患者さんのストレスは大きいでしょう。おおむね腎臓の生着率が心臓移植の生存率に相当すると想像します。5年過ぎれば3割は死亡します。

 サンデイミュン量が多すぎるとそのために腎障害をきたす事もあり、少なすぎても免疫抑制効果不十分になるので、微調整適量投薬が望まれ、定期的に外来通院継続してもらい、サンデイミュン血中濃度のモニター観察が必要です。

 サンデイミュンの維持量は4mg/kg/日で、50mgカプセルの薬価が698円なので、体重50kgなら4カプセルで約2,800円になります。保険診療だとその2割が本人負担です。その他の処置・薬剤費を加えるとかなり高くはなります。

 ただし透析や移植患者は身体障害者1級に登録されるので本人の支払い負担はほとんどありません。そのかわり透析も移植も高額医療なので、医療財政をとても圧迫します。

 サンデイミュンは当然の事ながら副作用もあります。先程述べた腎障害に加えて、神経ベージェット病症状、痙攣などの神経症状、糖尿病などの代謝障害、歯肉肥厚、血栓性微少血管障害などがあり、さらに高齢・長期連用で悪性腫瘍の発生率が高くなると言われています。

 また、サンデイミュンは他の薬剤との相互作用がおきやすいので、合併症発病時の他治療薬使用が難しいのです。主な合併症として、消化性潰瘍・出血、肝障害、高血圧などがあります。

 サンデイミュンでの拒絶反応抑制がうまくいかずに再度透析に戻った患者さんを私も2例ほど経験しています。5年しか移植腎臓がもたなかった患者さんの落胆した様子を思い出します。

 また常に免疫機能を抑制しているので感染に対する抵抗力が弱く、サイトメガロウイルス感染症にかかりやすいと言われています。風邪のシーズンはきちんとうがいをしたりして細心の注意を払っておられる患者さんもいました。風邪からの肺炎で死亡されたり、尿路感染症に伴う間質性腎炎で腎不全に陥る場合もあります。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.2 心不全の管理 2001.12.30

<心臓移植拒絶の臨床経験>

 1997年に西日本新聞に掲載した産業医のメモのNo.11<心臓移植>は、私が大学病院で指導医をしていた後輩が主治医になった時の実話です。

 <心臓移植>1997/6/19

 Kさんの息子さんは学校検診心電図で異常が見つかり、循環器専門病院に受診しました。診断は拡張型心筋症という心筋の壁が薄くなり心不全に陥る原因不明の難病です。

 入院して数多くの心臓薬が試みられましたが、効果は不十分でこのままでは助からない事が判りました。

 主治医とKさんの間で話合いが行われ、ついに心臓移植をする方針となりました。アメリカの循環器外科病院と連絡をとり渡米の段取りをつけて準備万端になった所で、本人に移植の説明をしました。

 21才の息子さんは「他人の心臓を自分の体の中に入れてまで生き延びたいとは思わない。」と拒絶されました。主治医は当然移植を受容してくれると信じて事を進めていただけにショックは大きかったようです。それから約1年の闘病生活の後に亡くなりました。彼の移植拒否の理由は独自の死生観があったためだと推測されます。

 現在、脳死を人の死と判定するかどうかが臓器提供者の立場での議論がよくなされています。しかし現実には臓器を受ける立場の人も提供する立場の人も多様な死生観・価値観を抱いて生きており、末期医療に携わる現場の医者も混乱し戸惑いの色は隠せません。生命とは何かを充分に論議した上で慎重に制度を考え直す必要性を感じました。

 本当は14才の女子中学生のケースだったのですが、プライバシーを侵害しないように年令を変えて男性にしています。

 14年ぐらい前の話ですが、渡米しての移植医療を勧めた時に、本人が「そんな事までして生き延びようとは思わない。」と言って移植拒絶された事で、教授を始めとして医局員全員に衝撃が走ったのを今も鮮烈に覚えています。当時の私にはこの拒絶の意味がわかりませんでした。

 他人の死を踏み台にしてまで生き延びるのは忍びないという患者さんの葛藤があったと推測します。それから1年も経たないうちに亡くなられて、後輩主治医が無念の涙を流したのを横で慰めていました。後で両親からは「どうして無理にでも移植にもっていけなかったのか」と主治医は責められたりして、とてもつらい思いをしたと察します。


<重症心不全者の治療(バチスタ手術を含めて)>

 湘南鎌倉病院でされているバチスタ手術ですが、特殊な手術で、術者の熟練技能を有するのでまだ他施設で広く施行されるには至っていません。

 心臓の左室前壁を大胆に切除して残った左室後壁などをつなぐわけです。もともと左室後壁の動きが比較的良くて機能が比較的に保たれている場合や、あるいは拡張型心筋症の中でも僧帽弁閉鎖不全症を合併したケースがあり、バチスタ手術とともに僧帽弁置換手術(人工弁置換)を施した場合はかなり劇的な急性効果が期待できます。

 バチスタ手術施行当初はセンセーショナルにマスコミでも取り上げられましたが、上記条件にあてはまらない場合は数年内に再悪化する場合も多く、心臓専門医の間での評価は徐々に落ちてきています。

 手術成績は、術後5年ぐらいの長期観察で良い結果が得られなければ一般臨床ではなかなか受け入れられないという厳しい鉄則があります。そのためにまだ広く普及できないところもあるのでしょう。

 心筋梗塞後の重症心不全患者さんには類似のドール手術(左心室瘤切除術)があります。梗塞壊死部位が薄くなって風船状に膨らむ左心室瘤を切除除去するのですが、梗塞をおこしていない心筋部はもともと機能が保たれているのでバチスタ手術よりは効果大です。湘南鎌倉病院や国立循環器病センターなどでされており、これはそれなりの実績を挙げています。

 心不全の一般的な保存的治療としては、ジギタリス剤、利尿剤、血管拡張剤などがあります。

 β-遮断薬は心臓の交感神経の働きを抑えて心筋代謝量を落とし心臓の無駄な仕事量を抑えて心機能を温存する治療で、私が大学病院にいたころの1985年頃から既に治検投薬が始まっていました。

 一般臨床に普及したのはそれから約10年後ですが、長期投薬の効果はすでに認められています。効果は数カ月して徐々に発現しますが、急激な効果改善は期待できません。どちらかというと心筋収縮力増進というよりも機能温存・悪化予防の意味あいが強く、重症拡張型心筋症での効果には限界があります。

 ACE阻害剤という血管拡張薬は本来は高血圧の治療薬なのですが、心不全の治療にも使われます。血管拡張による心負荷の軽減に加えて交感神経系の抑制作用により拡張した心筋の退縮効果がすでに認められており、頻用されています。

 ACE阻害剤と2年前から発売されたアンジオテンシン・受容体拮抗薬の併用効果も言われています。これらの薬は心血管系の合併症の予防効果が認められており、血圧を上昇させるホルモンであるアンジオテンシンUの亢進を抑えるとともに、最近はこの薬剤が一酸化窒素(NO)の産生を刺激して、血管の動脈硬化進展を阻止しているとわかってきました。拡張型心筋症による重症心不全にもその併用効果が期待され、現在治検中です。

 アメリカでは人工心臓装着が施行されていますが、日本では保健適用もないのでまだ1〜2例しか行なわれていません。人工心臓の難点は血栓と感染の問題が生じやすいことです。この問題を解決しようとして現在は完全植え込み型の人工心臓が研究開発中です。

 あとは骨髄幹細胞を利用した心筋再生医療ですが、まだ臨床応用は先の事です。私はこの人工心臓研究と心筋再生医療研究が連携合体すればもっと実用化に向けての進展があると思うのですが...。現時点でいずれの治療も不完全でいくつかの問題・限界を有しております。これらを施行・検討されたうえで「心臓移植以外には助かる道はありません」のなら厳しいものがあります。

 患者さんは、このようないろんな治療法があるという情報をもっと詳しく知りたいという気持ちも良くわかります。医療者と患者さんとの間の情報交換・コミュニケーションが大切でしょう。同じ重症拡張型心筋症であったとしても、個々の症例で見るとその病態の微妙な違いによってどの治療方法を優先するのがその患者さんにとって適切なのかあるいは不適当なのか、心臓専門医の詳しい検討を要します。

 バチスタ手術の時のセンセーショナルな報道であったような良い点だけで喧伝するのではなくて種々の問題・限界点がある事を患者さんが理解納得できるように主治医との間の十分なインフォームドコンセント(説明と同意)が望まれます。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.3 再生医療1 2002.2.1

<異種移植医療>

 異種動物からの移植として、ブタの研究が進んでいます。

 ブタの臓器はヒトに移植しやすいサイズで、さらには生理機能がヒトに似ていることと長年家畜として人と接触してきているので数種類の病原体にしかかかわっておらず、無菌的飼育のSPFブタなどの畜産技術が進歩しているなどの理由でサルなどより安全で、一番有望視されています。

 拒絶反応の問題がありますが、遺伝子組替え操作で拒絶反応をカバーできる可能性があります。しかし遺伝子操作の際の安全性の問題や、未知の内在性ウイルス感染の危険は残っています。

 「ヒト間心臓移植の平均生存年数は10年」、「ブタの心臓からの移植平均生存年数は半年」と言われています。有効期間は短くても研究者は「脳死者からの移植のドナー不足問題やコスト高」に比べての優位性を訴えており、実用化は自己臓器再生移植よりも早いと思われます。

 イスラム社会は宗教上の問題もあり実現不可能でしょう。

 このように食肉用の家畜を臓器移植に応用しようという研究も進行しています。


<バイオ技術の進歩>

 この2−3年のバイオ技術には目覚しいものがあり、これからの医療のシステムを根本から変えてしまいそうな勢いもあります。特にヒトゲノム解読とES細胞樹立が20世紀最後の大発見です。ただこれらの技術も応用方法いかんでは、生命倫理を脅かす危険な領域をも含んでおり、真理医療者としても無視できません。

 さしあたって近未来、医療現場に特に関係してきそうなのが次の4つですが、今回は、4.の再生医療の詳細を報告します。
1.遺伝子診断

 出生前に先天性の遺伝病がはっきりします。優生思想主義者からは妊娠中絶への拍車がかかるかもしれません。あるいは、若年時に遺伝子診断をして高血圧・糖尿病などの慢性疾患になりやすい素因もわかるようになり検診などの予防医学レベルでの、未病診断・生活習慣指導に活用できます。

2.遺伝子治療

 体細胞遺伝子組み替え操作により遺伝病を治すものですが、人体実験に伴う安全性が問題になっています。そのため臨床試験で治療効果が認められているのはほとんどなく、現在壁にぶち当たっています。

 私はこの遺伝子組み替え操作に非常に危険なものを感じます。特に生殖細胞への操作は後の世代に取り返しのつかない傷跡を残し新たな遺伝子病発現の元凶ともなりうるからです。

 また切り取った遺伝子を宿主になる細胞に運ぶベクターの開発も行われています。レトロウイルス・アデノウイルスが使用されたりしていますが、安全・発癌性の問題があり、実用化への道はまだ遠いと感じます。

3.バイオ医薬品

 製薬会社での研究が盛んでインターフェロンなどは遺伝子組み替えや細胞培養技術で大量生産されています。今後も進歩していきそうです。

 個人の体質を遺伝子情報から読み取り、薬の副作用をなくすオーダーメード医療も夢ではありません。抗ガン剤の研究にも結びつくでしょう。高齢化社会を迎え、これからの市場の多いアルツハイマー病や脳血管性痴呆を対象とした新薬開発がとても活発になっています。

4.再生医療

 詳細を以下にまとめました。

<再生医療の概要1.>

 再生医療というと、近日リバイバルするアニメのサイボーグ009にあったような肉体の部品交換をイメージする人もいるかもしれません。確かに人工臓器(透析、人工骨頭、義肢)などによる代用医療も進歩しており、日本はこの分野では先進国です。2年前のリバテイでも取り上げられていました。ところが人工臓器は現在壁にぶつかっています。細い人工血管などは血栓ができやすいし、感染の危険も大きいからです。

 再生組織工学とは臓器を人や動物の細胞を利用して再生する学問なのです。つまり「トカゲのしっぽを切ってもまた生えてくるのはなぜか?」という生態研究に通じています。細胞分裂が盛んな未分化な細胞を抽出して増殖刺激誘導すれば成熟した体細胞が蘇るのです。

 「心筋」「脳の神経」などの細胞は一度死滅したら蘇らないというのがいままでの常識でしたが、最近の研究ではそうではない事がはっきりと証明されています。試験管内で神経細胞を人工的に増殖させて移植できたり、患者さんの脳内で神経幹細胞の成長を促進させる薬が開発されれば脳梗塞・アルツハイマー病・パーキンソン病などの難病の画期的治療法となるでしょう。

 私のつかんだ範囲では、再生医療については次のいくつかの流れがあります。

 現在もっとも実用化しているのは培養皮膚で、米国オルガジェネシス社は割礼儀式の時に採取された男子の皮膚を原料として培養して商品化しており、今はやけどの治療に使用しています。また膀胱の再生技術にも手がけており商品化をめざしています。

 日本でも、Jテック社が口の中の粘膜から採取した細胞の培養技術を活用して、予定では2002年に培養皮膚、2004年には培養軟骨の受託生産を開始します。

 また、歯科治療での抜歯に残存している歯茎細胞から培養皮膚を作る計画もあります。

 コンタクトレンズのメニコンも培養皮膚の研究・開発をしています。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.4 再生医療2 2002.3.1

<再生医療の概要2.>

 再生医療を定義すると、組織や臓器の機能障害を組織や細胞の持つ再生能力を利用して修復したり移植したりしてよみがえらせる新しい医療概念だと言えます。

 次の3主流の研究が特に注目されています。まだ3〜4年ぐらいの歴史しかない最先端の基礎研究です。いずれは、これらの研究の融合から、臓器再生の道が開けると期待しています。


 1.現在世界的に注目されて話題になっているのがES細胞(胎性幹細胞)です。
 これは、未分化の培養細胞でそれ自体が全身のあらゆる器官に分化する可能性を秘めており、それがゆえに別名、万能細胞とも呼ばれています。理論的には分化を適切に誘導すればあらゆる臓器再生ができるはずなのです。

 1981年にマウスES細胞が樹立され、遅れる事17年後の1998年秋に米『サイエンス』誌にウイスコンシン大学のグループが人のES細胞樹立に成功したと発表されて、「科学の理解と社会への影響を根底から変える大発見」だと評されています。

 発生の流れで説明すると、ES細胞は受精卵が分裂して「胚盤胞」になった段階で、人工授精の場合であれば母体の胎内に戻す時期の細胞なのです。将来胎児になる細胞の塊を取ってきて培養して育てたものです。増殖・分裂能力が極めて高く、ガン細胞のように染色体の数が変わることはありません。

 最近は、細胞にはテロメア遺伝子というものがあり、細胞分裂ととも減少消失することがわかってきており、これが老化のシステムだという説もあります。ところがES細胞にはテロメア減少を抑えるテロメアーゼという物質が豊富なので、際限なく分裂すると言われています。

 現在ES細胞から心臓・肝臓・血管などの分化誘導の研究が進められています。

 ES細胞獲得は倫理的に規制されていますが、現在許可されているのは余剰卵を使った研究です。体外受精手技時の受精卵の余りから臓器や組織を再生して人に植え込む研究が進行中です。ところがES細胞由来の臓器は他人のものなので、当然臓器拒絶反応がおこりえます。ここが最大の問題点です。

 そこで、他人由来のES細胞の核をいったん取り除き、自分の体細胞の核に入れ替えると自分の遺伝子を持ったES細胞ができあがります(ミトコンドリア内のDNAは残存します)。ただし、この手技はまだ倫理的には許されていません。これはクローン人間作成のスタートと同じになるからです。近日、一部の狂った科学者がこの手法でクローン人間作成にとりかかるそうで残念な事です。

 将来は細胞バンクを作ってES細胞を保存して、そこからクローン技術によって患者と同じ遺伝子を持つES細胞を作成することも可能になるでしょう。各個人用のES細胞から必要に応じて分化誘導して移植用の細胞を作り増殖させ臓器を作り出し、それを移植する事も可能になるかもしれません。

 臓器再生に留まるならまだしも許せますが、生命体創造には倫理的に無視できない問題をはらんでおり、監視・警告が今後は必要です。


 2.は、細胞増殖・修復因子(蛋白)です。

 肝臓は昔から再生・修復旺盛な臓器だと知られていました。それには肝細胞増殖因子(HGF)という蛋白質の働きが関わっているとわかってきました。

 大阪大学の動物実験研究では、HGFを局注することで、急性肝炎・急性腎炎・急性心筋梗塞・脳梗塞などで瀕死の細胞が見事に生き返ってくる様子が確認されています。ただしHGFはガン細胞の増殖因子でもあって安全面の問題もあります。

 大阪大学医学部では糖尿病の合併症である閉塞性動脈硬化症の治療研究にこれを応用しています。大腸菌のプラスミドを取り出してHGFの遺伝子を組み込み、そのベクターを幹部の周辺に直接注射して血管を再生して足の切断を回避する研究があります。

(注:ベクター 遺伝子組み換えの時に切り取った遺伝子を宿主となる細胞に運ぶためにベクターと称する外来遺伝子を運び入れるDNAを使います。主に増殖機能を失わせた細菌・ウイルスなどを用います。レトロウイルス・アデノウイルスを使用することもあり、安全面での心配があります。)

 アメリカのニューヨーク医科大学の研究では、心筋梗塞で死亡した患者の心筋細胞を調べたところ、壊死した領域近辺に細胞分裂時に見られる蛋白質の発現を通常の84倍量も観察しており、細胞分裂が起こっている証拠も確認できています。虚血壊死のスピードに負けないくらいに速く種々の細胞増殖・修復因子を局注できれば、人工的に心筋細胞再生促進ができるようになり、画期的な治療法となるかもしれません。


 3.は、体性幹細胞(somatic stem cell)による自己移植です。

 幹細胞とは体を直接作っている細胞で、将来その臓器のもととなる細胞です。肝幹細胞、膵幹細胞、神経幹細胞、血管内皮幹細胞などが骨髄や臍帯血などから何十万個に1個の割合いで発見されています。最近は脂肪細胞の中から神経幹細胞なども発見されています。

 1999年に東京医科歯科大学眼科の坪田教授グループの研究では、幹細胞からの角膜上皮細胞の再生治療に成功しています。スチーブンジョンソン症候群・熱傷・化学外傷など従来から角膜移植を受けても視力回復困難な患者さんの健常眼の白目と黒目の境目の角膜上皮3mm大を取り出して、羊膜上で2−3週間培養増殖させて患側眼に移植するのです。成功率は50%程度ですが、視力0.02から0.9まで回復した人もいます。

 京都大学グループと共同で文部科学省の支援を受けて、角膜・網膜・視神経をすべて再生して失明者半減プロジェクトに取り組んでいます。

 久留米大学循環器研究所では、骨髄の単核球から血管の元となる血管内皮幹細胞を発見し、1997年にサイエンス誌に発表しました。この血管内皮幹細胞を抽出して増殖させ、虚血領域の組織に散布移植すると新しい内皮血管が派生・再生されることがわかりました。閉塞性動脈硬化症の患者さんの末梢血管部に自己移植することで足が腐らないようにできるのです。現在、関西医大と自治医大との共同研究が進行中です。

 現在20例の下肢閉塞性動脈硬化症者に施行して成功率は7〜8割で、副作用は今のところ出ていません。不成功例は腎透析患者さんだけでした。治療局所に異所性腫瘍(特に骨・軟骨腫瘍など)ができないかどうか長期観察途中(まだ1〜3年ぐらい経過)です。発生学的には軟骨腫瘍に分化する可能性もあったのですが、今のところはそのような問題は全くおきていません。拒絶反応の心配がないし、安全面での期待も大きいところです。

 本年春に山口大学のグループは、このやり方を虚血性心臓病(狭心症・心筋梗塞)へ臨床応用して成功したと発表しています。安全性と長期の有効性が証明されれば、心臓周囲の冠動脈循環障害の改善が期待でき、虚血心臓のポンプ機能悪化をくい止める新治療になりえます。

 心筋梗塞および拡張型心筋症などの重症心不全のポンプ機能改善治癒は、死滅した心筋細胞の再生医療が鍵を握ります。

 1998年に、慶應義塾大学・心臓病先進治療学講座の福田恵一講師のグループは、マウスの骨髄の間質細胞から心臓の筋肉のもとになる幹細胞を分離して心筋へ育てることに世界で初めて成功しています。

 人の心筋幹細胞は現時点では発見報告はされていませんので、多くの科学者が精力的に探しています。本年4月のネーチャー誌にマウスの心筋幹細胞が発見されたと報告されています。多分、近いうちに人でも見つかり、心筋再生医療への道がさらに開かれていけるでしょう。

 幹細胞を臓器再生の段階にもっていくにはまだ大きないくつかのハードルがありますが、何年か先には、他人からの臓器移植治療を凌駕する新治療になる可能性があります。この幹細胞(somatic stem cell)による自己移植は安全で倫理面の問題が少なくて、私が最も期待している再生医療です。

 ただしES細胞に比べると次の弱点もあります。
 1)増殖・自己複製能力は弱くて再生できる体細胞が限定されている。
 2)種々の細胞の集まりである臓器の再生は単一幹細胞のみの構築では困難なことです。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.5 再生医療課題と展望 2002.4.1

<最新の再生医療情報>

 2001年8月25日のNHKニュースや26日の各社新聞の報道では、世界で初めてドイツの医療機関が心筋梗塞の患者自身の骨髄から取り出した幹細胞を心臓冠動脈領域に注射して心筋の壊死部分が1/3に縮小し心機能が改善したと報じています。ただし、これが心筋幹細胞なのか血管内皮幹細胞なのかは不明です。

 2001年10月2日の各種報道発表では、京都大学再生医科学研究チームが、マウスの実験で卵子を使用せずに、固有の機能を持つように成長した体細胞をES細胞と融合して新しい細胞を樹立・成功したということです。受精卵と同じ未分化の状態に戻したES細胞と同じ機能を持った細胞なのです。

 これはES細胞に比べて簡便につくれる上に、拒絶反応のおきない臓器再生開発が期待できます。通常の2倍の染色体を持つ特殊な細胞なので安全性の問題はありますが、この手法だとクローン人間創成にはつながらないという利点があります。

 このように再生医療研究は文字どおりの『日進月歩』でして、毎月常識を覆す画期的な発表がなされています。1年後には、本情報も陳腐化しているかもしれません。


<再生医療の課題>

 研究の今後の課題のひとつにES細胞や幹細胞研究から臓器再生にまで誘導するにあたっての大きな壁は、再生した細胞を支持する組織をどのように造り出すかということです。ところが、臓器を丸ごと再生する場合、実際は内胚葉起源の細胞や中胚葉起源の細胞などの複数起源の細胞の組み合わせで臓器は形成されている事を考慮しなくてはいけません。

 このように、立体構造の臓器を作るにはこの融合と組み合わせがひとつの難関になっています。体性幹細胞よりはES細胞研究のほうが、臓器再生を有望視されている根拠はここにあります。


 ここで注目されるのが人工臓器です。ところが人工臓器も壁にぶちあたっているところもあります。たとえば人工血管の研究が進められていますが、これの難点は細い人工血管では血栓(血の塊)が生じやすいところです。

 通常血管の内側は内皮細胞でおおわれており、これが血栓発生予防の働きをします。そこで、人工血管の内側に内皮細胞を培養・定着させてから埋め込むという手法、つまり人工臓器と再生細胞の合体したハイブリッド型人工臓器も考案されています。

 『化学や繊維など素材産業には幹細胞の増殖を支える足場となる樹脂などの基礎技術が眠っているというが、企業の多くは「万が一の事故が起こった場合の対応がはっきりしない」(繊維大手)と二の足を踏んでいる。』という記事にもあるように、商業主義に走りすぎると倫理・安全面での不安もあります。


 再生医療が生命医科学領域の研究で一方の人工臓器は理工学領域の研究です。大学は基礎研究では優れていても、商品化(実用化)技術・コスト意識では民間研究期間に見習うところもあります。今後は大学学部間(医学部、理工学部、農学部の間)と民間の機関との共同研究・連携が進むとさらなる発展が期待されます。共同研究・提携でお互いの弱点を補強しあい融合することで臓器再生の実用化への道はさらに開けるでしょう。

 日本ではこの連携がアメリカに比べても遅れています。どこかの有名な研究グループだけで成功した素晴らしい再生医療の臨床研究も、そのままではコストが高い特殊技術に留まり、広く一般病院への普及はできません。

 「医療」と「産業」の壁を取り払い連携が進み、行政が種々の規制を緩和して支援してこそベンチャービジネスとしての道が開かれ、コスト安の大衆医療となり救済力も増すのです。この方向で進歩していった再生医療+人工臓器はいずれ臓器移植を不要とすると期待できます。


<臓器移植・再生医療の展望>

 人の細胞に付加価値がつけられるようになり、今後は生命細胞の資源化がさらに進みそうな勢いです。

 ただ生命の神秘性が薄れていき、精神性からかけ離れていき、唯物視観を強調する方向に医学が傾き過ぎないような舵取りが必要です。

 心筋・肝細胞の再生ができるようになれば、心・肝移植に際してのドナー不足問題などは忘れ去られ、脳死者からの臓器移植が古い野蛮な医療だったと言われる日が到来するようになるでしょう。

 文部科学省の科学技術政策研究所が5年に1回施行している「技術予測調査」があります。日本の頭脳とも呼ばれる全国の大学・官民研究機関の研究者へアンケート調査を行ない、1200通のコメントを受けて近未来の科学技術の展望とそのあり方をまとめてあります。

 2017年に分化した動物細胞から目的臓器の再生技術が開発され、2019年には分離した幹細胞から任意の臓器への分化が試験管内で可能になり、2025年には人工臓器や再生臓器による移植が半数以上を占めるとなっています。ただし残念な事は、心・精神・霊科学に関するものがほとんどなく、「脳型コンピューターの開発」などは、心が脳にあるという唯脳論の枠組みから抜け切らない発想だと思います。

 個人的には「霊界通信機」なども付け加えていただきたいのですが、もっと先のことでしょうか?


 再生医療の研究者達には脳死者からの臓器移植など眼中になく、将来は再生医療が臓器移植医療を凌駕するんだという夢を描いている人も数多くいます。再生医療の研究熱は高まり、その念いの集積は大きく膨らんでおり、移植医療に熱心な外科医たちの念いをすでに圧倒しているように思います。

 2001年春に再生医療学会が設立され、今が黎明期にあたります。

 臓器移植医療のドナー不足、ドナー・レシピエントの家族への説明と同意の煩雑さ、臓器移植医療が高額なので採算がとれず普遍的実用性に乏しい事、術後の拒絶反応などのいろんな問題に比べれば、再生医療のほうがまだ見通しがあると思われているのでしょう。

 これからは再生医療の進歩・確立が臓器移植医療の廃絶に寄与して行くと考えます。ただ気になるのは再生医療が次世代の儲かる急成長産業・ビジネスチャンスとして、欲得の思いだけで多くの企業が積極的に参入してきている所もあり、倫理的検討がそれに追いついていない点です。

 臓器移植医療がロボットの欠陥部分の部品を交換するレベルの唯物視観が基底にあるのに対して、再生医療は細胞・遺伝子への人的操作技術を施せば、後はその細胞の自己再生・増殖能力に託する部分もあります。

 「魂」の存在証明への道は、「神秘的な生命」の探求がその入口になるだろうと思います。生命細胞の持つ神秘性を抱ける意味でも、再生医療は先進医療だと言えるかもしれません。霊科学の元祖になりうる期待も抱いています。しかしその生命の神秘性の中から畏敬の念を発している科学者はどれだけいるでしょうか?

 生命は「神仏の念いの具象化」したものだと私は信じていますので、その理念に則した生命科学研究は是認されても良いでしょうが、特に生殖に関連した細胞研究(ES細胞、クローン)において、反した研究を進めていけば、人類にとって後世に大きな反作用を残しそうな気がします。皆で要所要所に生命倫理面での警告も発していかなくてはいけません。


 脳死者からの臓器移植医療はごく一部の施設で行なわれる特殊医療であり一般化しません。

 再生医療研究者の多くは、臓器移植医療の将来に見切りをつけて転身してきた人が多いのです。臓器移植推進派の医療者の方達に対しては「臓器移植は時代遅れの医療で、これからの最先端は再生医療+人工臓器だ。」との夢を語り、もっと現実的で大衆化しやすい医療に着目してもらいたいと思います。

 もっと一般世論としてこのような再生医療の夢・希望を強く語り続けていただきたいものです。国民的話題にまで広めていくことで、まだあまり陽のあたっていない再生医療研究者達への応援と励ましのエネルギー注入にもなり結果的に再生医療の臨床応用の時期を早める原動力にもなると思いますし、数多くの病気で苦しむ感謝さんも、素晴らしい医療の恩恵を受けられて救済されていきます。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.6 臓器移植と再生医療のQ&A NO.1 2002.5.1

 質問1.

 「臓器移植の中では、心臓移植がドナーにとって最も負担が大きいので(必ず死ぬ)、心臓移植こそ再生医療など別の治療に替わるべきだ」という意見に対して、どう考えますか?

 <回答とコメント>

 腎臓の場合は生きている人が片方の腎臓を他人に提供しても生命維持は可能ですが、心臓移植は他人の死を前提にして行われます。

 再生医療の自己幹細胞移植は、自分の体の中に潜んでいる未分化・幼若化した細胞を培養増殖させて臓器を再生するわけで、本来の自分の細胞を使用するために移植後の拒絶反応はありません。さらにはその拒絶反応を抑えるための副作用の強い免疫抑制剤の服用継続も不要ですし、感染をおこしやすいという心配もありません。臨床実用化された時の術後管理のわずらわしさは格段に少ないと予想されます。心臓移植後に拒絶反応を抑えられなければ、それは死を意味します。臓器移植を受けた直後から常にこれらの恐怖に怯えながら生きていかなくてはいけない宿命を負っています。

 再生医療の方が患者さんの精神衛生上にも好ましいと思います。再生医療は移植しか助かる事のできない患者さんにとっては、新しい選択枝であり希望の光です。恐怖や苦痛も少なくて他人への迷惑も少ない医療だと思います。

 レシピエントの立場では臓器移植が「他人の臓器をもらう奪う愛の医療」であるのに比べて再生医療は「生命力の神秘を体験する医療」です。患者さんは神仏の愛の念いともいうべき生命エネルギーの恩恵を受けて生かされていることを身をもって実感できるわけです。


 質問2.

 「脳死」という概念が、そもそも「イキのいい」新鮮な臓器を法に触れることなく取り出すために意図的に創られた概念だといえないでしょうか?そこには、外科の先生方の功名心があるとは言えませんか?(移植手術自体は、技術的には決して難しくないと聞いています)

 <回答とコメント>

 移植手術は臓器を置き換えるだけなので技術的には他の様々な手術に比べても難しいものではありません。執刀外科の先生にとってその腕の真価を問われるのは、臓器の機能をどれだけ損なわないままで移植できたかどうかなのです。

 元々の移植臓器の鮮度は重要な因子です。仮に「脳死」と判定されたとしても腎臓ならば冷却すれば1−3日保存できますが、心臓・肺は血流不足に弱いため冷却しても4時間くらいしか機能維持・保存ができません。さらには「心臓死」に近い循環不全状態で取り出された臓器ならば、血流不全などによる臓器損傷がすでにおきている状態にあります。

 執刀外科医にとっては脳死と判定されたら一刻も早く臓器摘出したいという思惑があります。そのためにも脳死基準をできるだけ緩やかにして、なるべく生々しい臓器を移植して良い成績を出したいのが本音でしょう。

 移植前のドナーとレシピエントの間の家族を含めた調整の気遣いや移植前後の管理に携わる救急医・内科医などの苦労は並大抵ではありません。それを切羽詰った短時間でこなしていくこと自体に無理があり、家族への満足のいく説明と同意ができないまま施行されるケースも多々あるでしょう。

 執刀外科の先生には日本でも数少ない珍しい症例の手術の執刀ができるという自己満足と功名心もあるでしょう。移植医療に関わる医療関係者・患者とその家族全体の最大多数の最大幸福をどこまで真剣に考えたことがあるのでしょうか?彼らは「臓器移植」こそが現代日本の最先端医療だと思いこんでいますが、これからの最先端はバイオ技術を駆使した「再生医療」だと断言できます。


 質問3.

 また、そうだとすると、再生医療の研究が進み臓器移植が全く必要なくなった場合、脳死の概念も必要性がなくなると考えますか?

 <回答とコメント>

 従来は臨床現場では心臓停止をもって死亡を判定していました。それに比べると現在の脳死判定基準は脳波や無呼吸テストなどの諸条件を必要とし、その判定方法も煩雑でなおかつ曖昧なところがあります。日常的にあらゆる医療現場で判定するのは不可能で、特定病院だけでしかできません。

 臓器移植が必要なくなった場合は、医師は早急に脳死による「死」を宣告する必要もなくなるわけです。移植用臓器が不要になれば、死に至る患者さんを看る医療者にとっても脳死判定の臨床上の意義がなくなります。臓器移植に携わっていない医師にとってはその基準がないと困ったりしたり医療方針が変わるものでもありません。

 従来通りに臨床現場では心臓停止でもって死亡宣告することでなんら支障はないはずです。臓器移植推進派の医師は、「脳死」の学問的研究を盾にして基準の設定を訴えていますが、本音は新鮮な移植臓器を確保するために「脳死」基準を無理してでもあまく設定しようとする意図が見てとれます。

 また「脳死」は「人の死」とイコールではないことを明確にしておくのは大切なことです。脳死だと判定されながらも、まだ心臓死にまで至っていない患者さんに対しても、医療の質にとどまらず、医療サービスまで低下するようになったら恐ろしいことです。


 質問4.

 「移植医療は、他人の犠牲の上に成り立つ過渡的かつ原始的な医療であり、ここ数年、あるいは数十年のうちに置き換えられる治療法である」と考えられますか?

 <回答とコメント>

 誰もが、死にいく他人の臓器をいただくよりは、自分の細胞由来の再生臓器を選択したくなると思います。移植ドナー不足・医療連携システムの煩雑さと高コストなどの問題点が多くて臓器移植医療は広く一般に普及するには限界があります。これをカバーできる最先端の研究が再生医療+人工臓器だと思います。

 臓器再生医療が実用化して一般医療となれば、他人からの臓器移植は野蛮な医療だと廃れていくでしょう。この予想を社会に向けて強く発信し、多くの国民の夢と希望となる肯定的話題にまで高めて広げていければこれからの臓器移植施行の強い抑止力になると期待します。さらには、まだあまり陽のあたっていない再生医療研究者達への応援と励ましのエネルギー注入ともなり、夢の実現はもっと早まるでしょう。

 科学技術調査では2020年代頃を実用化予測時期と見ていますが、過去1年内に続々と新発見があり、現実にはもっと早まる勢いです。

 IT革命の後は、このようなバイオテクノロジー技術産業が興隆してくるでしょう。IT革命のおかげで研究者間の情報交換が迅速になり、連携が強化されそのおかげで科学技術の進歩も、10年前の予想に比べて格段にスピードが速くなっているように感じます。

 再生医療を享受して回復した患者さんには、その体験から生命の価値と仏神に生かされている自分を再認識していただきたいものです。そして病気体験を通じて多くの人から受けたお世話に感謝してこれからはお返しの人生で生きていこうと決意して実践できてこそ、医療はその本当の真価が発揮できるのだと思います。

 再生医療の研究者の方達にも私は申し上げたい事があります。再生医療を単なる機械の部品を取り替えるぐらいの単純な見方をしてほしくないのです。ES細胞などに誘導をかけて託せば、突然に神経や骨などの細胞に自己増殖していくという神秘的奇跡を観察して、もっと素直に感動してほしいのです。この現象からも「生命の実相は単なる物質だけでなくその背後に霊的なものが実在する」という事に気づいていただきものです。

 再生医学は霊的現象の実在を正式に認める科学の元祖となりうるようにも思います。20世紀の科学は唯物視観を基底に進歩してきました。私は21世紀の霊科学の幕開けは、この再生医療研究から始まるのを期待しています。実用化に持っていく過程で、必ず倫理問題を含めた生命価値の命題に真正面に向き合わなくてはいけないからです。現在のITの世界的不況を救うのは、このような再生医療を含めた様々なバイオ技術だと思います。バイオ技術を駆使したビジネスの興隆が目前に迫ってきています。


 質問5.

 移植医療は、決して夢の医療ではないことを説明していただけませんか?

 <回答とコメント>

 1回の移植医療でかかるコストは高く、厚生労働省の進める医療費抑制方針と逆行しています。移植医療にはドナーの管理・レシピエントの管理・摘出臓器の温存と輸送・術後管理など莫大な費用を要す局面が多々あります。この中でも保険適用できる領域も限られてくるので、患者個人あるいは病院の支出などで賄わなくてはいけないのでその経済的負担は大きいものになるでしょう。

 今までは海外で移植手術を受けるための善意の募金もありましたが、国内で日常化すればそれもできなくなります。もしも大幅に保険適用を認めて臓器移植医療が頻繁に行われるようになれば、保険医療が完全に破綻してしまうでしょう。

 脳死患者さんはあの世への移行・過渡期の驚愕状態です。さらには脳死患者の家族は身内と別れる辛い境遇に置かれます。移植待ちの患者さんには、そのような他人の辛い状況の犠牲の上に成り立った医療である現実を直視したくないという無意識の葛藤があります。いつのまにか他人の不幸を待ち望んでいるという罪悪感が心の底に広がります。移植手術後も拒絶反応と感染の危険は生涯つきまといます。

 自分の細胞移植による再生医療は拒絶反応もなく術後管理が容易だと思われます。この点だけでも優位性は明らかです。

 臓器移植や再生医療は生命体の持つ「生老病死」の真理に対する医学のささやかな挑戦です。このような医療サービスを通じて「生」への執着があまりにも強くなりすぎるのなら、それはむしろ魂にとってはマイナスです。あくまで生活の質を高めて有意義な人生を送る手助けになったり、生命の恩恵に感謝する気持ちが湧き出てきて、価値観が転換して社会のお役に立てる人生を送ろうと決意してこそ有用なものになると思います。


 質問6.

 移植に適した臓器は絶対数がどうしても足りない。よって、自分に合う臓器が偶然見つかり移植を受けられる人と、見つからずに亡くなる人がでてくる。こうした脳死者という「偶然性」をあてにした医療は、本当に人を救う医療とはいえないのではないでしょうか?

 ⇒ 少ない臓器の取り合いや争いがおきる。経済力によって移植を早く受けられる人と後回しにされて亡くなる人が出てくる。生活のために臓器を売る人が出てくる。(現に、一部の貧しい国などでは、一個30万円位で、自分の腎臓を売る人たちがいるという)


 <回答とコメント>

 宝くじに当たるような気持ちで移植臓器を待つのは辛いことです。提供者数の絶対的不足は今後も解消されません。さらには貧しい国から売られてきた臓器は霊的にも欲得の念で汚れており死刑囚の臓器も恨みの念で汚れております。霊的実態がわかれば本当は気持ち悪くて受け入れられないものです。喜捨の心で申し出られた生体腎移植とは霊的には全く異なります。臓器の享受優先者は経済力の高い人達に限られており、すでに公平性を欠いています。受給できなかった人達の嫉妬心が渦巻いて不満と闘争もおこるでしょう。

 他人の不幸に頼らない再生医療ならば将来はどのような人でも享受できる一律公平な日常的医療となる可能性があります。嫉妬や不満も出てこないでしょう。再生医療には、自分の細胞であるという安心感があります。

 拡張型心筋症の初期段階でこのような予防的処置を施せば心機能の悪化を抑えることも可能となるでしょう。これからは、心臓移植でしか助からない重症患者さんは減っていくかもしれません。その結果、臓器移植の必要な患者さんの絶対数も減り、臓器移植医療の需要もなくなり廃れていけば良いなと夢を描いています。


 質問7.

 「移植は、5生率を高めるために、そもそも元気な人、移植しなくてもすぐ死ぬわけではない人(全身状態が良い人)によく行なわれ、移植してもすぐ死にそうな人は避けられると聞いたことがあります。ですから、移植してもしなくても5生率はあまり変わらないというのです。こうしたことが事実だとしたら、いかがでしょうか?

 <回答とコメント>

 これは臓器移植の正当性を意図した作為的な操作だと言えます。移植した場合としない場合の5年生存率を比較するのならば、重症度が同レベルの患者さんを選んで疫学的調査をしなければ意味がありません。臓器移植ネットワーク発表の患者さんの選定にしても、その優先選別基準も曖昧不透明だと感じるところがあります。

 マスコミは移植手術の時にはセンセーショナルに大きく騒ぎますが、移植を受けた人の5年後がどのようになったかの観察報告はあまりしません。もっとこのような分析結果の情報にもスポットをあてて臓器移植の妥当性と是非を公平な視点で長期に追跡調査して臓器移植の妥当性と是非を公平な視点で長期に追跡調査して広く一般にも教えてもらいたいものです。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る

 NO.7 臓器移植と再生医療のQ&A NO.2 2002.5.31

 質問8.(心臓移植は本当に夢の医療か その1)

 『記憶する心臓』(クレア・シルヴィア&ウィリアム・ノヴァック著 角川書店)に、移植後も心臓を通してドナーのパーソナリティーが生き続けるという衝撃的な事実が発表されました。脳死にいたる原因は、クモ膜下出血などの病気もありますが、他にも交通事故、ピストル事件、自殺、死刑などが挙げられます。

 特に後者の場合ですが、恐ろしい事故現場、殺人事件などの記憶、またドナー自身が持つ凶暴な性格など、「負の遺産」をも受け継ぐ可能性を全面的に否定しうるでしょうか?


 <回答とコメント>

 このような話は私も以前に聞いたことがあります。単なる交通事故などに比べると、ピストル事件、自殺、死刑などで死んだ人は、亡くなる直前のマイナスの念が強く、その臓器は霊的にも汚れているかもしれません。

 霊的波長の異なるものが体の中に入るわけですから、拒絶反応はもちろんのこと妊娠時の悪阻のようにレシピエントの人格に悪影響を及ぼす場合もあるかと想像します。固い信頼関係のもとで家族を救いたいという愛の思いでなされる生体腎移植の場合とは、同じ臓器献体でも霊的意味合いは全然異なると思います。


 質問9.(心臓移植は本当に夢の医療か その2)

 一番分かりやすい例として愛する家族が心臓を提供するドナーだとします。ドクンドクンと鼓動する心臓を目の前で摘出されたとしたら正気で見ていられるか、と想像してみました(私なら耐えられないですし、多くの人がそうだと思います)。

 脳死から心臓を提供するという「愛の行為」とは、つまるところはそういう「野蛮な行為」なのではないかという思いが捨て切れません。どうしても、「善意の他人および家族を犠牲にしてまで自分だけが助かりたいのではないか」と思えてしまうのです。この考えについては、どう思われますか?

(脳死移植は、無抵抗の人間に対して「愛の行為」を強制する、おぞましい治療に思えます。愛という言葉のもとに、他人に犠牲を強いる治療が、本当に愛に基づいたものになるかは、はなはだ疑問です。)


 <回答とコメント>

 唯物論・唯脳論主義の人の立場から見れば、「脳死は生命が無に帰した結果なのだから、臓器を摘出してもドナーの人格が残っているとか、臓器摘出時の驚愕するとかはありえない」という思いこみがあります。

 ところが感情も意思も消滅してしまったという価値観を完全に捨てきれず、「その体の一部に混沌とした生命の一部が宿っているかもしれない。他人の臓器を、ちょうど愛する人の形見の品(例えば首飾りなど)を大切に持ち歩くように抱きながら私は生き延びていくのだ。」という感覚でしょうか。

 しかし霊的真実をみればこれはまちがいであります。人間は肉体の死後も生き続ける本物の自己としての霊体があります。脳死状態では肉体と霊体を結ぶ霊子線(シルバーコード)が切れていないので、臓器摘出手術の最中も、真実の意識体としての自己(霊体)が恐怖で驚き、その後のあの世への旅立ちに支障をきたすのです。

 「善意の献体」という美辞麗句がありますが、臓器移植がドナーの方を驚愕させてあの世への旅立ちを妨げる大きな犠牲の上に成り立つのならば、現実的にも死に行く途上の本人には善意など考えられる余裕もないと推定します。移植推進医がレシピエントに臓器移植の合理性を納得・説得させるために造った妄想句にしかすぎません。

 その後有意義な人生を送ろうとしても、他人からの臓器移植を受けた人はその時点でドナーの魂に恐怖の体験を与えたことで、霊的観点から見ると魂として大きな負債をおっていると言えるでしょう。


 質問10.(心臓移植は本当に夢の医療か その3)

 『異議あり!脳死・臓器移植』(渡部良夫監修天声社)p.182〜183によると、「移植でしか助からない」と医師に宣告された心臓移植の待機患者の平均待機日数は、約五百日とされています。内科的治療を続けるうちに、(心機能が改善し)待機リストから外されたという朗報もあります。この事実をどう読み取ればよろしいでしょうか?

 <回答とコメント>

 医学は日進月歩です。内科の薬物治療の進歩とともに、5年前では助からなかった病気が、良薬ができて5年後には助かるようになる場合もあります。実際に新しい薬物のおかげで、10年前の予想では5年と持たないだろうと思われた拡張型心筋症の患者さんがまだ生き続けられたケースもあります。

 臓器移植と再生医療の関係も同様で、昔なら「臓器移植しか助からない」という常識が崩れ、今はその端境期だと思われます。


 質問11.(心臓移植に代わる医療としての再生医療−その可能性と危険性について その1)

 マスコミが報道しているとこの再生医療とは、どうしても、受精卵を使うES細胞による再生医療をイメージしやすいと思います。またその技術は、クローン創造にも応用可能であり、我が国ではクローン禁止を明言しているとはいうものの、クローン禁止法案では、受精卵および卵子の売買を禁止していないなど片手落ちになっております。

 この政府の方針は、ES細胞から臓器をつくることを暗に容認しているかのようにも受け取れるのですが、いかがでしょうか?


 <回答とコメント>

 クローン人間創生反対は、ほとんどの科学者の一致した見解です。体細胞の核を移植した羊のドリーなどに代表されるクローン動物は短命です。なぜなら一生の間に体細胞が分裂できる回数はヒトの場合は50〜60回ぐらいと言われており、体細胞由来のクローン生物は誕生時点ですでにいくつかの分裂後の細胞で成り立っているからです。

 倫理・安全面での問題があります。遺伝的異常がおこる可能性があり、クローン動物を契機に新たな遺伝病が発現し、後世へ負の遺産を残すという懸念もあります。ところが、クローン禁止法発令国は現在のところ日本、イギリス、ドイツ、フランスに加えて、今夏にアメリカでやっと成立したばかりなのです。無法地帯の国々が数多くあります。

 ES細胞によるクローン人間創生は動物実験の成功からも理論的に可能となっており、ある狂った科学者が2001年内に禁止法のない国で始めると宣言して物議をかもしだしてます。科学技術の進歩が早すぎて、全世界の国の法の整備が追いついていないのです。

 ES細胞は別名「万能細胞」とも呼ばれ、その分化誘導技術が確立すれば、増殖能力が高くて、あらゆる臓器の再生ができる大きな可能性を秘めています。この可能性が大きいところに研究者の興味が注がれています。ES細胞はクローン創生も可能ですが、多種臓器再生の大元になるかもしれません。だからまだ早計にES細胞の研究が全て悪だと言いきれないところがあります。

 特定の臓器再生にしかならない方法が確立すれば、クローン人間創生禁止の限定つきでの許可はやむおえないところもあるでしょう。アメリカ議会でも、ブッシュ大統領の苦渋の決断のもとで、今夏に特定のES細胞による研究を正式に許可しています。ブッシュ大統領にはローマ法王からの直接反対の意見もあり、かなり悩まれたようです。

 キリスト教ではES細胞にも魂が宿るので反対なのだそうです。ところが実際は魂は妊娠9週目ぐらいに宿るということであり、だとするとES細胞研究は魂に直接傷をつけることにはなりません。最近発表のES融合細胞も同様に魂に直接傷をつけることにはなりません。しかし幽体レベルには影響があるかもしれません。もしもES細胞からクローン創生に至るならば、幽体への傷は先天性の奇形に結びつく可能性もあり、魂は健全でも肉体的障害を被るかもしれません。

 安全面での慎重な検討が今後も必要です。この細胞の分化誘導の仕方次第で、人霊としての魂が宿るのが可能なところにまで持っていくと問題がおこるのです。臓器再生に限定した研究ならば魂は宿れないので、許容しても良いように私は思うのですが...。

 ES細胞からの臓器再生移植にはもう1つ問題があります。もともとが他人の細胞なので移植用臓器を作る過程で、レシピエントの体細胞核との遺伝子組替え作業を必要とします。この操作を行わない限り、拒絶反応が出現するからです。未分化細胞の遺伝子操作は安全性の是非の問題もあります。ES細胞はその他の未知領域が多く、それがかえって生命科学者の知的好奇心をくすぐっています。


 質問12.(心臓移植に代わる医療としての再生医療−その可能性と危険性について その2)

 臓器移植法にははっきりと臓器売買の禁止をうたってあります。クローン禁止法案もまた受精卵および卵子の売買の禁止を打ち出さないと、再生医療の流れがES細胞の方へ流される危険性をはらんでいると思われます。

 正しい再生医療の流れとしては、あくまでも体性幹細胞による技術(の開発・研究を)強調すると同時に、生命倫理をはっきりと打ち出した法的整備のほうを早急に進めることが肝要かと思いますが、いかがでしょうか?


 <回答とコメント>

 そもそも臓器売買の禁止は、貧しい国などで子供を誘拐してその臓器を売るという悲惨な犯罪を誘発しないようにとの意図で生まれてきました。ES細胞や体性幹細胞などのバイオ技術で臓器が再生できるという想定は元々ありませんでした。将来は再生医療が確立し、バイオ産業として発展していくためにも法改正が必要になるでしょう。これも科学技術の進歩に比べて関連法間の整合性と改正が追いついていない例です。

 おっしゃる通りに生命倫理をうちだした法的整備が急務ですが、ブッシュ大統領の苦悩からもわかるように、多くの政治家にも本当の生命倫理の価値尺度がわからず判断が難しいので法的整備が進まないところもあるでしょう。そのためにも明確な生命倫理の基準を提示して、全世界への啓蒙が重要だと感じます。

 体性幹細胞は、現在、人間では血球・血管内皮・神経・骨・肝・膵などが成人の骨髄や脂肪組織、臍帯血などから発見されています。体性幹細胞からはクローン人間の創生は不可能ですので、安全で倫理的問題も少なく、私も体性幹細胞による再生医療研究に期待して、もっと応援していきたいと思っています。体性幹細胞からあらゆる臓器の再生の目処がたてばES細胞研究もより限定されていくでしょう。


 質問13.(再生医療への素朴な質問)

 皮膚の再生医療は、粘膜細胞を使えば2週間で移植に必要な量が培養できるそうですが、心臓の場合には、どのような方法で、またどのくらいの日数が必要だとお考えでしょうか?

 <回答とコメント>

 心筋の再生の詳しいところはわかりませんが、血管の再生の場合で説明します。

 久留米大学3内科のグループが骨髄から血管の内皮の体性幹細胞を取り出して培養増殖させて、下肢の慢性動脈閉塞性の疾患であるBuerger病に臨床応用した研究があります。詰まりかけた血管周囲に何十箇所も広範に右膝下に3センチ間隔で局所注射をすると、1週間後には痛みが和らぎ、3週間後には歩けるようになり、新しい血管の派生を確認しています。1年後の観察でも、問題となる副作用や腫瘍・石灰沈着などの出現も認めていません。

 山口大学のグループは心筋に同様の処置をして、詰まりかけた冠動脈の再生に成功しています。

バックNOもくじへ//最前線クラブへ戻る//トップページへ戻る