好奇心コラム


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 MIZ.VOL.5 日本再生のシナリオ PART2【水町祐之】

 「日本再生のシナリオ」は、日本経済さらには日本のあるべき姿とその実現に向けてどんなことをすべきかについて、筆者が、「加藤の乱」を契機に多くの政治家諸氏に投稿した内容を要約再構成したものです。

 もの言わぬ市民では日本は良くなりません。意見を募集しておられる政治家も多いので、皆様もどんどん投稿されることをお薦めします。何万通とメールが溜まれば、化石のような政治家諸氏もやる気になってくれましょう。



 NO.107 ジョブレス・リカバリーにはなったが --2003.11.13

 先日の新聞報道によると、ネット検索で他を圧倒して急成長したアメリカの「グーグル」が、いよいよ来年に上場するようです。そのやり方が、新進企業らしくて大変に面白い。何でも、「ネット公募」による新規株式公開(IPO)を検討しているらしい。

 引受主幹事の投資銀行が売り出し価格や売り先を決める従来のやり方ではなく、ネット上で新規株の買い手を競売方式で公募するやり方の可能性を関係者に打診したそうです。すでに高収益で知名度も抜群の同社が売り出し株をネット競売に掛ければ、株価の急騰は必至になるとか。

 これについて、日経新聞は、「異例のネット公募方式を採用した場合、引受手数料を狙うウォール街に痛手になるほか、個人投資家が殺到し混乱を招く恐れもある。」とコメントしていました。一方で、共同通信は、「株式公開の仲介手数料の節減とともに、証券界で上場をめぐる不正取引などのスキャンダルが多発する中で、透明性をアピールする狙いがあるようだ。」とのコメントもありました。

 どちらのコメントも正しいだろうし、最終的にどんなやり方になるのかはわかりませんが、インターネットを効果的に利用すれば、従来の常識はことごとくうち破れるかも知れませんね。日本でも、先日、商品価格比較サイト大手の「カカクコム」が上場して人気化していました。消費者の利便性を追及して、最終的に消費者に支持されている企業というのは、何と言っても強いものですね。


 さて、余談はこれくらいにして、全般的な経済情勢を展望すると、人員削減や事業再構築に邁進してきた優良企業の業績は回復してきて株価も持ち直しつつあり、前述のような、ITバブル状況からは一皮むけた新興IT企業の上場のニュースが新聞紙上を賑わせたりで、いいニュースもチラホラ聞こえるようになりました。でも、経済全体としてみれば、まだまだ本格的回復と言うには心許ない気がします。

 何しろ、日本では、ここ数年、企業の絶対数が日に日に減っています。本来なら、景気が云々とか失業率が云々などとのほほんとしたことを言っている場合ではありません。資本主義経済の一番の基礎である企業の数がどんどん減っているのです。企業が増えないことには、景気も回復しないし、雇用も増えるはずがない。


 今年になって、資本金1円で株式会社が設立できる制度が発足し、かなりな数の会社がその制度を利用して開業されたようですが、まだまだ足りません。

 欧米では、どんな不景気な状況下でも「開業率」が「廃業率」を下回ることはありませんが、日本では、まさに世界でも例のない異常な逆転状況が続いています。誰も会社を創りたがらない。リスクがあってもやってやろうという意欲的な人々が減っているのです。

 実は、新制度を利用した開業者には中高年が多く、若い人々の開業者はまだ低迷している様子。つまり、リストラされて、再就職口がなくて仕方なくトラの子の退職金などを元に会社を創っているという構図なのですね。資本金1円で会社はできるとしても、2〜3年でも会社を維持していくには最低でも数百万円は資金が必要ですから、若い人々には困難です。

 新規起業者には成功する人より失敗する人の方が多い結果にはなりましょうが、彼らは現代の英雄、彼らには最大限のエールを送りたいと思います。何とか成功して、人を一人でも多く雇えるような会社になって、一人でも多くの人が大儲けして欲しいものです。


 まあそれはそれとして、日本人はどうしてこんなにも後ろ向きになってしまったのだろうと、特に政治家諸氏は考えを巡らすことが大切だと思います。

 筆者は、日本の「税制」が、国民をそんな消極志向に誘導しているのだと考えます。税制は、人々が思う以上に思想性があり、国民はそれを敏感に感じ取ります。日本人は、大多数が、わざわざややこしいことに首を突っ込まないで、じっと貯金でもしておくのが得策だと考えているわけです。こんな状況では、日本経済の本当の再生はありえません。

 企業は全てが生き残って成長するのではなく、30年も生きながらえる企業はむしろ希で、逆に、それ位のリスクがあるからこそ、より多くの人々が、挑戦意欲をかき立てられて企業を興してくれる制度やしくみが大切なのです。そして、新しい企業がどんどんできて企業の新陳代謝が進まないことには、生活者(消費者)が得をする社会も実現できません。

 そんな社会を「弱肉強食」が云々と毛嫌いする人々もいますが、そうではありません。生き残る企業は、少なくとも、他の競争相手企業よりは消費者が得をする製品やサービスを提供している企業のはずです(非合法なインチキ商法は別として)。

 自分の消費行動をふり返ってみれば良くわかるのではなかろうか。良くて安い製品があるのにわざわざ悪くて高い製品を買ってくれるほど、消費者はお人好しではありません。銀行やゼネコンのように徹底して政府の庇護下に置けば一応は生き残れますが、それは一昔前の共産国がやっていた経済運営手法で、消費者にとって何のメリットもない。

 やはり、行き着くところは「税制」。成熟した市場主義経済をめざすこれからの日本では、単に資金を銀行に寝かせておくのは「悪(損)」で、株式市場やベンチャー企業とかNPO関連などにお金を回してくれるのは「善(得)」だということが、国民にはっきり認識されるような税制にすることが大切です。そうすれば、自ずからお金は必要なところに回り始めます。


 先月、日銀が、やっと重い腰を上げて、証券化市場のインフラ整備に乗り出すという報道がありました。欧米に遅れた証券化市場育成のために、日本独特の商慣行などの問題点を洗い出し、市場整備に乗り出すというニュースです。具体的には、債権を無断で第三者に売却することを禁じた特約なしの融資の普及や信用情報の整備などが検討される見通しのようです。

 つまり、間接金融に偏重した金融システムを改め、日銀が金融緩和してもマネーが実体経済に染み出さない「資金の目詰まり」の打開をめざし、今年度中に報告書をまとめ、法整備の必要があれば民間団体が関係省庁に働きかける際の指針にするらしい。

 そんなことは、金融危機が言われ始めた当初から一部の専門家諸氏は指摘していたのに、政治家諸氏の多くは、銀行をどう立ち直らせるかとか、既存企業をどう救済するかや保護するかなどの一般ウケを必要以上に意識した弱者救済的な枝葉の政策を強調するだけで、これからの時代の金融システムが本来どうあるべきかには無関心でした。


 成熟経済社会では、絶対安全な投資は単なる夢物語にすぎません。日本は終戦後の復興期ではなく、生活基盤や産業基盤が一通り充足された経済社会だから、人々の志向は地域的にも世代的にも多様化しており、安全確実な資金運用の間接金融に偏重した金融システムでは経済が成り立たないという認識が大切なのです。

 そんな時代環境では、安全な資金運用が宿命の従来型銀行は大した役割は果たせない。それよりも、如何にしたら少しでもリスクを分散しながら経済を発展させていけるかというスタンスで金融全体のシステムを再構築することが必要です。

 金融システム面のしくみの検討は日銀などに任せても良かろうが、それと同時に、政治家諸氏が早急に手をつけなければならないのは「税制の思想改革」です。つまり、リスクに対する大幅な税制上の優遇策です。両者が補完しあうことではじめて、資金をリスク分野に誘導することが可能になります。


 ところが、政治家諸氏や役所など、政策当事者たちの視点はどこかがズレている。

 先日のヤフーの配信ニュースに、こんなのもありました。

[10/21 ヤフー配信 (以下、筆者の主観を含めた要約)]

 公的に保証する「信用保証制度」の貸し倒れが急増し、穴埋めのための税金投入が昨年度までの10年間で約2兆円になったことが会計検査院の調べで判明した。

 この制度は、各地の「信用保証協会」が保証し、返済が滞った時は協会が銀行に肩代わりで返済し、肩代わりの7-8割は特殊法人「中小企業総合事業団」からの保険金で補てんされるしくみ。

 中小企業総合事業団の保険収支は1992年度以降は赤字に転落しており、特に、政府が98年10月―2001年3月に審査要件を緩和した「特別保証制度」を実施してからは、赤字幅が一気に拡大したとか。肩代わり分のうち50%を回収できると見込んでいたが、実際には今年3月末時点で6.7%しか回収できていない。

 公的な保証制度は、銀行が借り手を協会に紹介するケースが大半で、協会はもともと審査能力などないから銀行の審査を追認する。公的な保証付き融資は全額回収が可能な「正常債権」となるので、金融機関は、審査などは形ばかりで、アブなそうな企業の融資とか借り換えなどを体良く協会に押し込んでいるのでしょう。


[11/5 ヤフー配信 (以下、筆者の主観を含めた要約)]

 地方のベンチャービジネスの活性化を図り、不況からの脱却を後押ししようと政府が1995年度に始めた「ベンチャー財団」による投資事業が低迷していることが会計検査院の調べなどで分かった。

 96年度には全国で135件、97年度には157件に達した投資案件が、昨年度はわずか25件。新規投資は今年度までで、“官製金融”は尻すぼみで終わることになりそうだ。

 この事業は「創造的中小企業創出支援事業」。全国の自治体が設立した中小企業振興公社などの財団法人(通称「ベンチャー財団」)が、新興企業に出資したり、民間の投資会社に出資の資金を貸したりする。資金は中小企業庁所管の特殊法人「中小企業総合事業団」や、各自治体が提供している。

 しかし、不況の長期化などで投資案件は減少。検査院によると、出資先が破たんして責任を問われるのを恐れ、投資に慎重な財団も多かったという。

 全国の財団の投資実績は今年3月末時点で624社、278億円で、電子部品の開発などハイテク関連企業が多かった。このうち4社が株式上場を果たしたが、一方で81社が破たんし、投資総額の約9分の1に当たる約30億円が回収不能となった。

 群馬県は毎年1―2億円の投資資金を準備したが、これまで3社に計8500万円を投資しただけで、今年度は事業をやめてしまった。福井県は3社に計約1億5000万円を投資したが、うち2社が破たんした。


 筆者に言わせれば、そうなることくらいはやる前からわかっていたこと。お粗末と言わざるをえません。そんなことは、当たり前。経済運営に必要以上に公的セクターがシャシャリ出たり、あるいは従来銀行に過度に期待してみたところで、それは一時しのぎの効果だけで、どうせ本質的な解決にならないのです。


 そもそも、これまで、日本の銀行は個々の企業の事業将来性に関心がありませんでした。と言うよりも、筆者らがいろいろな企業で新規事業の計画立案の手伝いをしてきた経験から言えることは、銀行には事業将来性を評価するノウハウがありませんでした。

 新規事業をやる場合、資金を融資してもらうには事業採算計画書の類の提出を求められますが、それは、融資担当者が上役に融資決定のハンコをもらうための参考資料として必要な、いわば、手続上のセレモニーの位置づけでした。内容を評価できる融資担当者はほとんどいなかったのが実態です。

 少し語弊がありますが、収益予想で融資担当者をごまかそうと思えば赤子の手をひねるよりも簡単。当然です、銀行は、個々の事業の詳細な事情については何も知らないし、それがわかる人材を育成しようと言う気もありませんでした。世の中が高度成長期だったので、ことさらにその必要もなかったと言えるのかも知れませんね。

 彼らが何を基準に融資するかと言えば、まずは「担保(普通は土地)」がどのくらい価値があるか、次に、過去5年間がどんな経営状態で推移しているかです。取引関係の強い会社であれば、銀行側は、その類の情報は資料を提出するまでもなく大方は掴んでいます。

 これでは、ある程度の歴史や実績のある企業はまだ良いのですが、そうではない歴史の浅い企業や、または取引関係の弱い銀行に融資してもらう場合には、お互いにお手上げの格好になってしまいますね。


 この20数年間、銀行は、そんなスタンスで企業融資をやってきました。その前の時代がどうだったかは知りませんが、20数年間もそれを続けていれば人材は枯渇します。だから、個々の企業の事業将来性をどう評価するか、あるいはリスクにどう対処するかなど、彼らにとっては雲を掴むような難題なのです。


 本来は、集めた預金を社会に回すのが銀行の役割りですが、町工場に融資するにも、彼らにはもう担保がないし、中国との競争リスクもあるから銀行も簡単には融資に踏み切れない。銀行に自己資本の十二分なゆとりがあればそのリスクを吸収できるという面もありますが、忘れてならないのは、日本の銀行には、リスクの大きな環境で融資するノウハウがないという点。

 日本の銀行にあるのは「担保融資」の経験だけ。だから「担保評価」や「差押さえ」には長けていますが、現代の銀行経営に不可欠な個々の企業の事業将来性自体や投資リスクを適正に評価・対処するノウハウがない(人材がいない)のです。人材育成には、どうがんばっても3-5年は必要というもの。

 だから、大手の地方銀行などでは、今では支店での企業融資審査は絞って融資審査窓口の集約化を推進しています。そして、収益源の住宅ローン開拓に必死。住宅ローンは、今も担保融資が可能な唯一の分野で、当面はそんなことでしのぐしかない。

 欧米の銀行は、ある銀行は個人リテイル業務、別の銀行は投資銀行業務(日本では証券会社に近い)と、各々が活動分野を特化してノウハウ獲得に励みました(証券化やリスクヘッジなどの手法のこと)。その間、日本の銀行は、足並みを揃えて「何となく貸金業」で規模拡大に走り、リスクの大きな現代の銀行経営に必要なノウハウで大きな差がついてしまいました。

 その程度のことは監督官庁も知っているから、強引にでも中小企業や新興企業への融資を急ぎたい政府は、政府保証による融資促進をめざしたわけですね。しかし、公的セクターが中心になってそんなことをしても、それは逆にリスクが大きいと筆者は以前より指摘していましたが、案の定そんな結末になりました。民間金融機関にさえないノウハウが、役所にあるはずがない。


 要するに、日本は、高度成長期に銀行が果たしていた金融仲介機能にかわる(補完する)直接金融の活性化こそが求められているのです。従来の銀行融資のような形態に固執していても前進はありません。前進のための突破口になるのが「税制の思想改革」です。

 極論すれば、預貯金の元本に税金を課し、リスク資金(株式投資やベンチャー投資など)に補助金を出す位の発想転換が必要です。詳細は知りませんが、堅実な国民性のドイツさえもそれに近いことをやっているらしい。預貯金にお金が滞留しても、国債がさばきやすくなるだけで、実際の経済活動の活性化には何も貢献しないからです。

 政策担当者たちには、1300兆円もの膨大な個人金融資産を、如何にしたらより直接的な経済の活性化に振り向けてもらえるかに知恵を絞って欲しいものです。



 NO.108 株式市場の不思議な現象 --2005.8.10

 久しぶりの出稿になりました。と言うのも、「景気の踊り場」状況が長く、政治的な方面でもとりわけ目立ったことがなかったので、出稿の機会を逃してしまいました。


 さて、ここに来て、「郵政民営化法案」の賛否についての自民党内のゴタゴタで、急遽(8月8日)、衆議院が解散になり、にわかに政治が急展開する雲行きになってきました。はじめは、いつもの自民党内の牽制合戦かとタカを括っていましたが、お互いが行くところまで行ったわけです。

 結果的には、いかにも小泉首相らしい「言ったことは必ずやる姿勢」を貫いてくれました。小泉首相のこんなやり方を「ワンマン的とか独善的」と嫌う人々も多いと思いますが、筆者は、ややこしい裏取引などを詮索する必要もないこんな単純なやり方が好きです。

 少なくとも改革をやろうとする時には、いろいろな方面の意見をいちいち細かなことまで聞いていたら改革などできません。こんなやり方も「改革の推進者」としては不可欠だと思います。

 野党である民主党にとっては「棚からぼた餅」的な解散劇でしょうが、小泉首相の解散劇の演出は、なかなかどうして、そつがないというか的を射ている雰囲気です。これで、もしかしたら、ちょっと冷めかかった小泉人気が挽回できるかも知れません。


 この数年間のことを思いおこせば、バブル経済が破綻し、それを何とか乗り越えようと「橋本首相」「小渕首相」「森首相」の歴代首相は、程度の差こそあれ、「時代遅れの財政出動に頼り切った経済政策」によってバブルの傷をますます深めていく経済政策に終始してきました。

 それにピリオドを打ってくれたのが小泉首相です。竹中平蔵経済財政政策大臣という時代に最適な経済ブレーンを得られた幸運もありました。もっとも、竹中平蔵経済財政政策大臣という逸材を発掘し、慣れない政界に引っ張り出して経済政策の具体的なシナリオづくりを任せきった小泉首相の炯眼は大したもの。

 もしも、小泉首相が、小渕首相の時の堺屋太一経済企画庁長官のような、ひと昔前の感覚の経済ブレーンに経済運営を任せていたらと考えると、ゾ〜ッとします。今頃、日本経済はムチャクチャになっていたことでしょうね。

 念のために申し添えますが、筆者は、堺屋太一元経済企画庁長官を社会評論家とか「万博などのイベント」で一時的なバブル経済を演出するイベントプロデューサーとしては非凡な方だと思っています(経済政策立案者としてはちょっとね〜という感じ)。


 まぁ、余談はそれくらいにして、小泉首相が「衆議院の解散」を表明したとたんに株式市場が一気に急騰し始めたのには、正直、驚いてしまいました。

 筆者は、衆議院が解散になれば、従来パターンのとおり少なくとも2〜3日は政治的混乱に敬意を表して(?)株価は下がるのかと思っていましたが急騰しました。

 9日に「景気は踊り場を脱却した」という政府の「月例経済報告」が出たのもうまいタイミングになりましたが、株式市場とは不思議なものですね、ほんとに。時代の流れを見事に反映してくれます。

 金融不安と民間セクターの構造改革(リストラ)は小泉-竹中改革で何とか乗り切って、当面、経済面では特別な懸念材料も見あたりません。株式市場は、好調な企業業績を背景に、何でも良いから「上がるきっかけ」を待っていたのかも知れません。

 そして、さぁこれからが「行財政改革」の本番という時に、唯一の不安材料だった「自民党の癌」のような存在の「守旧派」勢力が性懲りもなく内紛劇を演じ、その結果、自滅して政治の表舞台から消えることが確実となり、これでほんとうの「新生自民党」になれると株式市場は好感したのですね、おそらく。

 小泉-竹中改革の経済政策は、即効性がないだけに、これまでも、野党の民主党ではなく自民党内の「守旧派」によって折に触れ邪魔されるという実に複雑な政治情勢が続いていました。もう、そんな「守旧派」が自民党からいなくなる、日本経済にとって万々歳と判断したのでしょう。

 総選挙の結果、仮に民主党政権になっても、民主党と小泉自民党の経済政策そのものには大差ないし、自民党の「守旧派」さえ政治の表舞台から消えれば経済にとってマイナスにはならないというのが、大方の株式市場参加者の認識だったのかも知れません。

(注) 「守旧派」とは妙にわかりにくいことばですが、筆者は、「公共投資を錦の御旗に掲げる人々」という意味で使っています。彼らは、公共投資の原資が税金でも財政投融資でも、いづれにしても、政府の裁量でお金を使いたがります。そして、政府の裁量で使えるお金が減れば、国会議員として政府に大きな影響力を行使する自分の存在価値がなくなると考えます。


 筆者も小泉首相と同じで、「郵政民営化」はこれからの「行財政改革」の突破口になると思います。何とかして、小泉新生自民党に躍進してほしいですね。

 実は、最近めっきり充実してきた観のある民主党にも密かに期待していたのですが、「解散」の日の参議院での民主党の演説やその後のテレビでの岡田代表の何かごまかしたようなコメントを聞いて、失望しました。

 民主党も、「郵政民営化」はこれからの「行財政改革」の突破口ということくらいは認識していると思ったのですが、労働組合に遠慮したのかどうか、「郵政民営化はどうでも良い」と受け取れるニュアンスのことを言うようでは「行財政改革」は無理でしょう。

 小泉首相には、少なくとも「郵政民営化」までは、心を鬼にしてでも強引にでも持てる力の全てを発揮してもらいたい。経済は立ち直りましたが、「行財政改革」つまり公的セクターのリストラはこれからが本番です。日本経済は一応は立ち直ったと見て良さそうですが、国の財政は、ますます借金地獄の様相です。


 経済は、小泉-竹中改革の基本的スタンスである「政府が余計なことをしない」ということだけでもうまくいきますが、「行財政改革」は公的セクター自らがリストラの当事者としてやってもらわなければならないテーマです。

 「郵政民営化」は、本コラムでも度々指摘している郵便貯金や簡易保険などの金融面の問題だけでなく、国の財政圧迫を解決するための重要テーマである「公務員削減(または公務員人件費削減)」実現の突破口でもあるはずです。

 こればかりは、小泉首相以外の自民党の政治家にはできないでしょう。ましては、労働組合が主要支持基盤である民主党ではできそうもありません。是が非でも、小泉首相にその道筋をつけておいていただきたいものです。


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/ 1.お役所の文法 / 2.どうか『はぐらかさないで』ください / 3.『行政指導』って何だろう / 4.『公務員』って何だろう-株式市場田畑論 / 5.株式市場活性化こそがポイント / 6.非常事態宣言、将来性は個人活力で / 7.旧来銀行の役割は終わった / 8.『自己責任』って何だろう /

/ 9.問題解決の方程式 / 10.環境のうねりと戦略的視点 / 11.経済戦略会議へ提言しよう / 12.中年世代はもっと自分中心になろう / 13.個人力を強化しよう / 14.成年は大志を抱こう / 15.将来の生活を楽しくしよう /

/ 16.株価回復は日本再生の前提条件 / 17.規制緩和の徹底推進 / 18.成熟社会に向けた世論づくり / 19.IT分野に関連する規制撤廃は戦略的要因 / 20.まとめ /

/ 21.経済はもっと単純に / 22.いわゆる景気はどうでもいい / 23.経済破滅の足音 / 24.規制緩和とリスクへの投資 / 25.成熟社会では国ではなく自分で選択する姿勢が大切 / 26.個人活力時代 /

/ 27.日本はハチ社会 / 28.直接金融の途 / 29.責任のとり方 / 30.もはや待ったなし / 31.非常事態宣言と新規雇用創出 / 32.エンプロイヤビリティ開発投資 / 33.人質奪還政策 / 34.銀行は多すぎる / 35.一人一人が自覚する時 / 36.まずは国会リストラ / 37.行政指導が巨悪の原点 / 38.立法と行政の責任明確化 /

/ 39.党内融和は戯言 / 40.行政の継続性と責任 / 41.田分け者の発想 / 42.株価対策の決め手 / 43.護送船団から個別企業強化 / 44.政策責任者は、即仏門に / 45.葛根湯医者はいらない /

/ 46.日銀の出る幕はない / 47.これからが与党内戦争 / 48.国全体が諫早湾 / 49.株式投資優遇税制 / 50.雇用と株式市場活性化 / 51.緊急経済対策 / 52.日本の癌になった政治家達 / 53.惰性を断ち切れ / 54.外国人投資家は見ている / 55.発展途上国からの脱皮 / 56.お金は血液、株式市場は農園 /

/ 57.産業構造調整がポイント / 58.資金の預貯金集中は悪 / 59.民間活力よりも個人活力 / 60.規制緩和の良いところ / 61.郵政事業の民営化 / 62.経済構造改革の骨格 / 63.国民へのメッセージ / 64.郵便貯金のクーデター / 65.道路特定財源で産業構造調整 /

/ 66.ジャパニーズマフィア / 67.マフィア解体の環境づくり / 68.上級官僚の人事権は内閣に / 69.株式等投資税制改革は戦略 / 70.起業促進が最重要 / 71.小さな政府になれば / 72.産業育成よりも起業促進 / 73.政府より自治体、そして個人 / 74.最重要課題が「検討」では / 75.産業構造調整と賃金格差 / 76.銀行では企業育成は無理 /

/ 77.財政投融資と経済的投資 / 78.日本列島災害化論 / 79.賃金政策と少子化対策 / 80.議員は余計なことをするな / 81.平均賃金の切り下げ / 82.資本主義は株が中心 / 83.税制改革の本質 / 84.豊かな生活のために /

/ 85.新大東亜共栄圏 / 86.失なわれた10年と競争力回復 / 87.日本の格は下がる一方 /

/ 88.大臣達は発想を間違えている / 89.日本は三流国になったか / 90.国の「痛み」とは何だろう / 91.産業構造を変えねば未来はない / 92.民主主義ではなかったとは /

/ 93.いのちがかがやく生活文明郷 / 94.国防編 / 95.子供編 / 96.金融編 / 97.政治行政改革編 / 98.戦略編 /

/ 99.管理の神髄は全員に目立たせる / 100.日本的な島国発想 / 101.政治決断できない政治家達 / 102.どうでも良いところをお金がグルグル回る / 103.技術貿易立国という発想 / 104.夢の生活文明郷づくり / 105.挑戦意欲を鼓舞する税制思想改革 / 106.豊かでやりがいのある社会をめざして /


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